ワークショップ

   企画の背景、進めかた

企画の背景

今回の大震災は、東日本全体に未曾有の被害をもたらしましたが、こういった大災害に遭遇した私たちはまず、どうやって復興していくのかという前に、今何を思い、そして、次に何を考えていかなければならないのか、じっくりと問うてみたいというのが、本ワークショップのねらいです。シンポジウムというカタチではなく、参加された方々が、今回の“大震災”を可能な限り“体験”しながら共有し、私たちが何を思い、今後の地域のあり方についてどのように考えていけば良いのかを共同作業的に探っていく機会を与えるものとして位置づけたいと考えています。何を思いどう考えるのか、ここに私たちは、環境との共生の原点があるのではないでしょうか。

過去の出来事から人類の英知を結集し、未来にそれを活用していくという進歩主義は、人間社会が持続していくためのエネルギーでもあります。しかしその一方で、こういった進歩主義が人々に脅威を与えることがあるのも事実です。それは、人類があたかも自然をコントロールでき、自分たちに都合の良い生活空間を作ろうとするときに現れる“奢り”からくるものかもしれません。リオサミット以降、持続可能な地域づくりということが強く意識されるようになりましたが、ここには、多くの人々が持続可能性と闘いながら農業・漁業・商工業を地域の中で生業としてきた歴史を省みることは少ないと思います。グローバル化した経済社会の渦中で、こういった地域だけで完結するような社会は持続可能ではないことは明らかですが、一方で、今回の大震災では、地域の崩壊によって日本全体が大きく揺らいでしまっている現実を目の当たりにして、このグローバル化がもたらした効率化社会の脆弱性も明白となったように思います。また、阪神淡路大震災との比較もよくされており、過去の経験が生かされることも多いと考えていますが、震災による被害が甚大な農漁村においては、都市型の地域再生ではなく食・農・村をつなぐ新たな展望を描くことが必要です。

 ワークショップの進めかた

このワークショップでは最初に、8割近くの世帯が大津波に襲われた陸前高田市をフィールドとして、長年、地域資源を活かした地域づくり研究に携わってこられた両角和夫教授(東北大学大学院農学研究科)に基調講演をしていただきます。この地域に描いていた将来ビジョンと合わせて、陸前高田市の復興を、“以前の陸前高田市を継承し再生していく”という観点から、今、何を一番大切にすべきものなのかについて言及していただきます。

次に、話題提供者として、平野勝也准教授(東北大学大学院情報科学研究科)には、時を繋ぐという観点から地域復興のあり方についてお話していただきます。佐々木健二氏(西公園プレーパーク副代表)には、震災で遊び場を奪われた子どもたちを支援するネットワークについてお話いただきます。また東北の大学に限らず全国から学生ボランティアが集結し活動されておりますが、TKK大学連携プロジェクト(東北福祉大学/工学院大学/神戸学院大学)の一環としてボランティア活動されている吉田麻美さん、東北大学地域復興プロジェクト“HARU”でボランティア活動されている猛尾航さんからお話いただき、活動現場の声と支援する側の思いをストレートに届けていただきたいと考えています。

最後に、コメンテーターとして、阪神淡路大震災での復興に携わった経験から盛岡通教授(関西大学環境都市工学部)、復興は持続可能性を考え「スマートシュリンク」でと提言される林良嗣教授(名古屋大学大学院環境学研究科)、そして、今回の震災で脆弱性が顕わになったグローバルサプライチェーンをどう確立するかの観点から根本敏則教授(一橋大学大学院商学研究科)、農林水産省が行う今後の政策研究の方向性について、香月敏孝教授(東北大学大学院農学研究科連携講座、農林水産省農林水産政策研究所上席主任研究官)から、コメントをいただきたいと思います。

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