卒論要旨

参加型開発アプローチにおける一考察
−カンボジア自立支援プロジェクトの事例を通して―
井上裕美(資源政策学分野)


 
参加型開発アプローチとは、援助プロジェクトの立案・計画、実施、評価という一連のプロジェクト・サイクルの全過程へ受益者である住民が直接参加するアプローチである。このアプローチ法によって、プロジェクトの効果、効率性、持続性が高まり、さらに住民が開発の主体へと成長していくといった効果が得られると主張される。そしてこうした効果を発揮させるべくこのアプローチ法を活用するためには、住民の「組織化」が不可欠である。それではNGOや援助機関等のコミュニティ外部の存在は、住民の「組織化」へ向けてどう働きかけることができるのであろうか。

 外部の働きかけを考える際に、筆者は次の2つの分析視角を用いた。1つは対象コミュニティの「自己組織能力」の把握であり、もう1つは対象コミュニティの内部システムとそれを取り巻く地域社会システムとの関係把握である。前者はコミュニティに存在する従来の社会組織的対応の把握を意味し、従来の組織的対応を活用、強化するよう外部が働きかけることで新たな組織形成の糸口を探る事ができる。また後者は、特にコミュニティの内部システムと地域行政との関係に注目して把握する。なぜなら、実際の援助現場で現地行政の役割を補充、代替するためにプロジェクトが実施されることが少なくないため、そうしたプロジェクトでは行政と対象コミュニティの関係把握が重要となってくるからだ。

 本研究で事例として取り上げたカンボジアにおける貧困対策プロジェクトにおいて、実際にこの分析視角を用いて住民の組織化へ向けた外部の役割を検討してみたところ、その分析視角が有効であることが分かった。