卒論要旨

持続的な資源政策の課題−ラオスにおける集水域管理の事例研究−
七久保 充 (資源政策学分野)


 東南アジアで唯一の内陸国であるラオスは、人口約
500万人の農業国で、人的資源が乏しくインフラも未整備など、一人当たりGNP$374と依然低位のままである。このため外貨獲得源は、木材や衣類に次いで、水力発電による電力輸出が重要な位置を占めている。しかし、最近ではこの発電力が減少している。この原因は、ダムの集水域で過剰な焼畑や森林伐採がなされ森林が減少したことによる、土壌流失と水涵養機能の低下と見られている。そこで集水域を管理し森林を保全、復旧する必要が生じてきたのである。

本研究は、以上のように森林資源の保護とダムの安定した電力供給を維持する役割を担う持続可能な集水域管理について、ラオスの事例をもとに考察を行う。その方法として、まず日本の琵琶湖の集水域管理を引き合いに出しつつラオスの事例の概要を明らかにし、次にラオスで最大の発電力を誇るナムグムダムにおいて集水域管理を実行中の、3つのプロジェクトに絞りそれぞれの特徴を比較し、効果的な管理を検討した。

得られた結論として、ラオスにおいて集水域管理が持続的であるためには、日本のような行政主導では財政負担が大きいことから実現が難しく、そのため財政負担軽減と住民の所得向上につながる住民の主体的参加による森林管理を進めると同時に、インフラ整備や教育・医療などその地域住民の生活水準を向上させることが不可欠なことが判明した。これにより、地域発展とダムの安定的発電が得られると期待される。