研究概要
8-ニトロ-cGMP:

NOシグナル伝達の新規メディエーター

8−ニトロcGMPは、本学医学部の赤池教授と協力して発見した内因性cGMP誘導体です(2007年)。S-グアニル化(右図)によってタンパク質Cys残基と結合して、機能を発揮します。その後、当研究室は8−ニトロcGMPが内因性のオートファジー制御因子であることを突き止めました(2013年 Mol. Cellにて発表,新聞報道複数)。オートファジーは疾患の抑制に深く関与しており、8−ニトロcGMPをもとにした創薬研究も推進中です。

この他にも、8−ニトロcGMPから8−アミノcGMPを経由する代謝経路の解明など、当研究室独自の成果を上げています(2012年)。

バンコマイシン耐性菌克服のための化学的アプローチ バンコマイシンはMRSA感染症治療の「最後の切り札」であり、バンコマイシン耐性菌(1986-)の出現は深刻です。
私達は耐性菌(VREやVRSA)に有効な新規抗菌活性物質を創出しました(特許多数)。
化学合成と作用機序解析の連携により、なぜバンコマイシンが抗菌性を示すのかという疑問の細部に踏み込んで研究しています。

黄色ブドウ球菌の細胞壁合成に関わる酵素PBP2に、特に注目しています。酵素反応をin vitroで再現するため、酵素基質の全合成も達成しました(Chem. Eur. J. 2013)。この酵素と薬剤の相互作用を現在詳細に解析しているところです。

生物活性天然有機化合物の全合成 現在、合成の標的としている化合物の一部を示します。名大院理との共同研究も続いています。
  • 抗生物質KENDOMYCIN

Kendomycinは武田薬品工業によって発見されたアンサ環を持つ抗生物質です。英国の研究者によってバンコマイシン軽度耐性菌(GISA, Mu50)に抗菌性を示す事が明らかになりました。私達は、この化合物自体の化学合成に挑戦しています。上記のようにバンコマイシン耐性に関係する生物的な共同研究態勢が整っているので、合成過程で得られる誘導体を用いて新たな抗菌剤設計に有用な知見を得る事も目指しています。

  • 海洋天然物Pinnaic Acid, Halichlorineの合成研究

これらの化合物は、名古屋大学の上村大輔教授が1996年に報告した化合物です。変わったアザスピロ骨格を有している等の理由で世界中で合成研究が行われています。
私達は、Halichlorineの絶対立体配置を決定するとともに、Pinnain Acidの全合成を達成しました(Angew. Chem. Int. Ed.に掲載、2007年)。

最近ハリクロリンの全合成を達成して論文発表しました(Chem. Asian J, 2013)

その他、複雑な骨格を有するジテルペンの合成研究,超原子価ヨウ素試薬を用いる新規反応開発も行っています。

kendomycin
パリトキシンの『形」 パリトキシンは巨大なサイズと、生物活性から天然物化学史に残る重要分子です。私達は、この分子の「かたち」を見てみたい!と考えて研究しています。

SPring8での小角散乱や、NMRを用いて研究しています。右図に示したようにパリトキシンは溶液中で2量体を形成しています。

アセチル化すると、単量体になり生物活性が低下します。

分子を見る研究は、今後一層大事になると考えています。

カリウドバチ毒液に含まれる麻痺性物質の研究 カリウドバチ(狩人蜂)の仲間には、孤立性といって単独で暮らしているものも多く存在します。ベッコウバチもその一つです。このハチは、幼虫の餌となるクモを狩って毒液で麻痺させ1ヶ月以上の間、仮死状態にします。この間に孵化した幼虫が生きたままのクモを食べて育ちます。ファーブル昆虫記にも記載のある現象です。

麻痺物質の正体を求めて研究を続けています。

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