研究室の紹介


農業と環境を作物栽培を通して考える!

私たちは,環境と調和した持続的な作物生産技術の開発を目的として研究に取り組んでいます.別の視点で述べるなら,土と植物の関係を探るフィールドサイエンスということもできるでしょう.

 現在、地球規模で環境問題が深刻化していますが,環境負荷を与えているという点は農業も例外ではありません.これまでの生産性を最優先としてきた農業では,農薬や化学肥料の不適切な使用などが環境負荷の原因となっていました.今日においては,環境負荷を軽減しながら土壌生産力と作物生産の持続性を高めることが求められています.

 私たちの研究室は宮城県大崎市鳴子温泉の東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センターにあり,そこで研究をおこなっています.

ベースはフィールド研究!

センター内外におけるフィールド研究をベースに,特に次のような視点から研究に取り組んでいます.

  • 作物生産に必須ですが資源の枯渇が危惧されているリンについて,作物の根に共生する菌根菌の機能を活用して有効に利用する技術や,堆肥や土壌中のリンの量を診断してリンを無駄なく作物に吸収させるための技術
  • 「いきもの」と共生する有機栽培技術,特に「ふゆみずたんぼ」と呼ばれる冬期に湛水する水稲栽培技術の生産性,そして水田の生物相や環境に及ぼす影響
  • 水田からの温室効果ガス「メタン」の発生を抑止しつつ,水稲の生産,廃棄物有効利用の一石三鳥を目指したポリシリカ鉄(PSI)浄水発生土の水稲栽培への利用技術
  • 新たな手法で製造されたコンポスト(アシドロコンポスト)の新たな機能(雑草抑制)の利用
  • 作物の根系を評価する新たな手法開発

こちらも参考に!

研究室の雰囲気はフォトアルバムをみるとわかります.


菌根菌については齋藤雅典「土と植物をつなぐ菌根菌の不思議」をご覧ください.
  (河北新報「科学の泉」全6回 2013年11月26日-12月1日)


これまでのオープンキャンパスの資料もご覧ください.

最近の研究


東日本大震災による津波によって被災した農地の土壌特性解析と修復

 東北大震災に伴う巨大津波で被災した宮城県全域の農地の土壌調査を宮城県の関係機関と本学土壌立地学分野との共同で実施した。津波がもたらした堆積物が多くの地点に存在すること、泥土状の堆積物は土壌より塩分濃度が高く、FeS2などの可酸化性硫黄が多量に含まれ、水稲生産上の障害になる可能性を明らかにした。被災水田土壌の高Na/低Caの状態をCa資材(転炉スラグなど)によって改善できるかを明らかにするために2012年より石巻市の被災現地圃場において圃場栽培試験を開始した。

長ネギに対するアーバスキュラー菌根菌の接種効果

 リン酸肥料の減肥を目指して、作物の根に共生してリン吸収を助けるアーバスキュラー菌根菌の長ネギに対する接種効果を圃場試験により調べた。土壌のリン酸肥沃度が高い圃場においてもAM菌の育苗時接種により、長ネギの初期生育を促進できる可能性が示唆された。しかし、収量面から接種効果を見出すことはできなかった。一方、リン酸肥沃度が高くても感染する土着AM菌の存在は興味深い。

PSI浄水ケーキの農業利用

 重合ケイ酸と鉄イオンからなるポリシリカ鉄(PSI)はアルミニウム系に代わる浄水処理用凝集剤である。PSIを用いた浄水場から発生するPSI浄水ケーキは、可給態ケイ酸・易還元性鉄に富むことを明らかにし、ポット試験・圃場試験によって、PSI浄水ケーキが水稲の生産性を向上させ、既存の含鉄資材では抑制の困難な水田からの温室効果ガス・メタンの生成抑制が可能であることを明らかにした。浄水ケーキの廃棄処理には膨大な費用がかかっており、PSI浄水ケーキの農業資材としての利用は、生産性向上・温室効果ガス発生抑制に加えて、資源循環の面からも有益であり「一石三鳥」の効果が期待できる。

生態系と調和した農業技術の開発

 生態系保全型水田農業技術である「有機」,「冬期湛水(ふゆみずたんぼ)」(水鳥の保全に有効)において,様々な調査を続けている。

新機能コンポストによる雑草抑制

 「アシドロコンポスト」は、乳酸発酵によってコンポスト化が酸性で進行するため、アンモニア揮散による窒素負荷が起こらない。各地の食品残渣コンポスト化施設で製造されたアシドロコンポストについて、その特徴を調べ、窒素含有率が高く肥料効果の高いこと、また、アシドロコンポストには雑草を抑制する機能のあることを明らかにした。新機能コンポストとしての利用技術の開発を進めている。

水稲栽培における根の動態と土壌炭素との関係

 水稲有機栽培の収量形成・環境影響において重要と考えられる根系動態の調査をおこなった。その結果、有機質肥料施用栽培で生育初期の根の発生量・枯死量が化学肥料施用栽培より大きいことが明らかとなった。この結果に基づき温室効果ガスに密接に関係する土壌炭素動態の予測をおこなったところ,有機質肥料施用栽培で,化学肥料施用栽培より土壌炭素が多く蓄積されると予測された。このことから、土壌炭素動態への根の影響はこれまでの予測より大きいと考えられた。

ページトップへ