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University of California, Davis滞在記(板谷麻由子)

はじめに

研究拠点形成事業の一環として、University of California, Davis(UC Davis)に留学しております博士一年の板谷麻由子です。この滞在記を書くにあたり、5か月間の留学にあたり機会をくださった研究拠点形成事業の先生方、留学で受け入れてくださったUniversity of California Davisの先生方、そして研究・生活ともにサポート頂いた乙木百合香さん、ラボの皆さん、UC Davisで出会った皆様に心から感謝申し上げます。拙文ですが、今後留学に行かれる皆様の励ましになれば幸いです。


Davisの生活

気候や食事
 Davisはとても住みやすい街です。日本人にとって海外に出るとき最もつらいのが食事だと思うのですが、自炊をすれば、毎日和食を食べれる環境です。Korean Marketがダウンタウンにあるので、基本的に日本人が恋しくなる食材たちは購入できます。移動手段に関しては、自転車さえあれば日常生活には困りません。そういう意味では仙台のような街です。治安に関しては安全といわれています。私自身、夜遅くに自転車で乗って帰ってしまう事がたまにあるのですが、今のところは無事に帰ってきています。しかし、悲しいことに銃を持った人がキャンパスの近くで度々目撃されていたり、銃撃事件が起き、二名の方が死亡される事件が発生しました。日本にいると夜の外出する抵抗感がないと思いますが、アメリカはやはり夜は怖いものと認識する事がまず重要なのだと改めて考えさせられました。

左:自転車の町Davis! 学校、町、個人宅の庭のモニュメントまで自転車です。
右:キャンパス内にターキーがいます。まずいし性格が悪いです。一度追い回されました。


私生活

外に出る機会は日本よりも圧倒的に多く、また自分の時間が持てる分「休日の過ごし方」というのはとても考えさせられます。日本では土日も学校というのが当たり前になっていたのですが、こちらに来て週に1、2日休む事は大事だと実感しました。夜早く帰るようになって思うのは気持ちに余裕ができた事、そして効率は大して変わらないという事です。


人生の中でこんなに動き回ったのは初めてぐらいに土日は外出しています。教会で知り合った友人に招待してもらいThanksgiving party(上段左)、カリフォルニア旅行(上段真ん中~下段左)、クリスマスセールへの便乗(下段真ん中)、土曜の朝は近所の公園のFarmer’s marketへ(下段右)。子供たちが元気に遊んでいます。


研究生活

「なぜ世界中からアメリカへ研究者がわざわざ行くのか?」という疑問を長年持っていました。こちらに来て、[研究者を守る体制]と[高い教育水準]に感動しました。


授業

こちらの学生のレジュメを見ていると、基本的な機器分析の原理、より実験的な応用までを授業でやっています。授業は基本的に自分の専門分野のものを取り、実験と関連した基礎的な部分を学んでいるようです。大学が能動的にスペシャリストを養成しようという意識が強い印象を受けます。


研究者の安全を守る

大学が研究者の安全を守るために真摯に取り組んでいます。「風が強いので歩きや自転車で帰らないでください。無料のバスを出します。」というアナウンスがあったときは本当に驚きました。また、実験をするためには安全講習を受ける事が必須で、80点以上取らないといけません。この講習を受け、ラボ内の安全講習を受け、長袖・長ズボン着用、大学から支給される実験に応じたラボコートを着てようやく実験が開始できます。


プライベートと仕事

上記と少しかぶりますが、滞在記を書かれている他の先輩方と同じように一番感じたのが、こちらはとても仕事もプライベートも充実している方が多いという事です。例えば、土日・クリスマス・年末年始等休暇中にラボにいるのは本当に稀有な事で、学生やポスドクの方に”Are you crazy?”と言われ、気の毒な目で見られます。月曜から金曜までは基本8:30-17:00(遅くて19:00)でとても集中して取り組まれています。


Don’t be shy. Don’t hesitate to ask.

この言葉は実験指導してもらった博士課程の学生達が私にくれた言葉です。私は英語が堪能な状態で来たわけではないです。なので、周りの方の時間を奪ってしまい、とても迷惑をかけ、落ち込み背負い込んでしまうという悪循環に陥っていました。しかし、指導してくれている学生3人からこの言葉をもらい、「私にとって初めての留学である事をわかった上で君の研究が成功するよう祈ってるから、絶対英語が堪能じゃないからって聞くのをためらわないで。」と励ましてくれました。この言葉をもらって、わかんないと素直に言えるようになり、話しかける事に対する抵抗が緩和されました。実験も動けば徐々にですが進み始めました。また研究室の雑用やラボの実験の指導など、少しですが任せてもらえるようになり、ラボの一員として働ける喜びを感じています。この経験を通して、自分が動けば進し、動かなければ恐ろしいくらい何も進まない事を肌身で感じています。


(上段左)サンプルのミルク、(上段真ん中)Davisの象徴:貯水タンク、(上段右)ラボの学生達とディナー、(下段左)ラボミーティングでの集合写真、Ameer先生と共同研究している方々も参加しています。(下段右)私たちのラボがあるUC Davis Robert Mondavi Institute (RMI)。とてもきれいな建物でViticulture & EnologyとFood Science & Technologyの二つの研究科から成ります。


留学のきっかけや動機付け

最後の項目ですが、留学へのきっかけや動機付けについて、これから海外に出る皆さんにこちらで感じたことを共有したいと思います。なぜなら、来る前にしっかり目標を持っている事は、英語の上手下手よりももっと大事であるという事を日々感じているからです。こちらの大学生・大学院生は、学位を取って何がしたいのか、社会にどう貢献・還元したいかという事を意識しながら研究を進めています。初めてのミーティングで先生方と話した時、最初の質問が「将来はPh.Dとして社会にどう貢献したいの?」でした。また、先生だけでなく、学生にも必ずこの質問をされます。これは日本のラボでも一緒だと思いますが、アメリカに来る分、なぜわざわざアメリカまで来てしたいのか?を考えて、研究室を選ぶ事をお勧めします。
私のきっかけは、将来海外に出ていくためのコネクションがほしかったからです。3月に研究拠点形成授業のご厚意で、Davisに1週間滞在させていただき、その際アメリカの大学で准教授として研究されている日本人の方と話す機会に恵まれました。研究を通して直接的に社会に貢献している研究者と出会い、私はPh.Dを取った後、海外に出て研究をしたいという気持ちが強くなりました。しかし、私のような模索中という日本人や海外の方は珍しく、お会いした皆さんは「このラボ・アメリカに来て何がしたい」かというビジョンをしっかり持って取り組まれています。


最後に

ここまで読んでくださりありがとうございました。恐縮にもこのような場で自分の考えを発表させていただく機会を頂き、偉そうに書いておりますが、留学中山ほど失敗し、何度もくじけそうになっています。でもだからこそ、一つ一つの課題を達成できたときは嬉しく、プライドも恥も気にせず、研究・私生活共に楽しく過ごさせていただいております。何より出会った皆さんの優しさに支えられています。私はやることはやる一方で、自由で茶目っ気のあるアメリカという国が大好きです。皆様もぜひぜひ日本を離れ、海外に出てみてください!。


ご拝読ありがとうございました!

板谷麻由子
東北大学大学院農学研究科 博士課程後期1年
機能分子解析学分野
  • 日本学術振興会
  • 研究拠点形成事業
  • 東北大学
  • 東北大学大学院 農学研究科
  • 食と農免疫国際教育研究センター