園芸学会平成9年度秋季大会の報告

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 1997年度の園芸学会秋季大会は,10月11日−13日に,愛知県名古屋市名城大学にて行われました.11日と12日の午前中に研究発表(発表課題数:果樹81,野菜104,花卉90,利用47,ポスター46),12日の午後にシンポジウム講演会,13日に見学会が行われました.本研究室では助教授の金山が果樹部会で,学生の西山が野菜部会で発表しました.ここでは,見学会(野菜コース)と,研究課題の一部について紹介します.


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見学会

園芸学会の秋季大会では,開催地の園芸作物の産地の見学会があります.
ここでは,私(西山)が参加した野菜コースについて紹介します.

パートT
知多管内におけるフキの栽培・南知多町における大規模露地野菜栽培

パートU
農林水産省野菜・茶業試験場 施設生産部



研究発表


T.野菜部会

課題番号85 アレチウリの花芽形成及び花の性表現に対する日長と葉面積の影響
加藤ら(東京農大農学部)

 アレチウリを用い,日長処理の長さと処理回数および日長処理時の葉面積が花芽形成に及ぼす影響について検討し,子葉展開期の限界日長が13時間と14時間の間に存在すること,短日処理回数と葉面積が増えるのに伴って花成刺激が増大し雄花,雌花の開花節数が増加することを考察した.



課題番号87 ダイコンの花芽形成に対する低温とジベレリンの相互作用
千ら(東京農大農学部)

 低温に感受しにくいダイコンにジベレリン処理をし,低温に感受しやすいダイコンにウニコナゾール処理をして,低温と処理の組み合わせが花芽形成に及ぼす影響について調査した結果,花芽形成がジベレリンによって促進され,ウニコナゾールによって抑制されること,特に低温処理終了後の生育中の処理によって強く影響を受けることを示した.



課題番号91 半導体レーザー光源の作物生産への利用.第1報.コヒーレント光がサラダナの生育に及ぼす影響
山崎ら(浜松ホトニクス株式会社)

 半導体レーザー(*1)の植物栽培用光源としての可能性について検討し,コヒーレント光(*2)である680nmの単一の光環境でもサラダナが生育することを明らかにした.
 *1 半導体レーザー:植物の成長に有効光な光のみ利用するので,光源の低コスト下に繋がる,高出力,熱が出にくい等の特徴がある.既存の高圧ナトリウムランプや蛍光灯より優れる点があり,近い将来,実用場面をになう新光源になると考えられる.
 *2 コヒーレント光:単一波長で,指向性(まっすぐに放射される性質)や干渉性に優れる.



課題番号95 イチゴの四季成り性品種‘サマーベリー’における花房発生の限界日長
西山ら(東北大学農学部)

 今年の春季大会で,四季成り性イチゴ‘サマーベリー’の花芽形成の限界日長が12時間日長と16時間日長の間に存在することを発表したが,今回は,更に日長時間を細かく設定し,より正確な花房発生の限界日長を確認しようとした.その結果,13時間日長と14時間日長の間に限界日長が存在することが示された.



課題番号96 イチゴ高設採苗における不織布付着による発根促進法

伏原・三井(福岡農総試園研)

 高設栽培において,下垂したランナーに繋がった状態で子株に不織布を付着させ,持続的に水分を保持することによって,発根が促進され,切り離し後の活着率が高く,植え付け時に不織布を付着させたままにすると固定しやすくなる等の栽培における利点について紹介された.



課題番号104 イチゴ新品種‘奈良7号’(仮称)の育成

信岡・泰松(奈良農業試験場・株式会社ホープ)

 西日本で主要品種である‘とよのか’に代わる品種として,高果実品質に加えて多収かつ省力的品種の育成を目指した.‘アスカウェイブ’に‘女峰’を交配し,選抜を行い,食味が良く(糖酸比14.5〜26.1),大果(平均果重13.7g)で,果形の揃いの良い(正常果率86.7%)品種が育成され,1996年3月に種苗登録した.



U.花き部会

課題番号44 デルフィニウムの周年栽培に関する研究.第7報.冷房育苗が促成栽培における抽台と開花に及ぼす影響
勝谷・梶原(広島農技センター)

 高温時期の定植では早期抽台してしまうデルフィニウムにおいて,育苗温度と冷房育苗した苗齢(定植時の葉数)の影響について検討し,冷房育苗温度を20(昼温)/10(夜温)℃で育苗し,展開葉が7−8枚に達した苗を定植すると,高温時期でも高品質切り花が収穫できること,また,発芽をそろえるには25℃くらいが望ましいことをついて発表した.



課題番号50 カーネーションの開花予測と母の日を目標とした栽培技術

今村・須藤(野菜茶試久留米支場)

 母の日に向けたカーネーションの切り花栽培において,秋(10−11月)に摘心倒伏処理をすることによって開花期が集中すること,発蕾日と開花日の間に密接な関係があること,また,発蕾日の予測の指標としての茎の先端から葉の先端までの長さを調べることによって,開花日を予測できること等について示した.


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