公開シンポジウム

テーマ:園芸療法と市民農園 −園芸を取り巻く新しい動き−
基調講演
「園芸療法とコミュニティー」 グロッセ世津子氏(園芸療法研究家,(有)みどりのゆび)
 園芸療法の実際について説明.園芸療法では,園芸という活動(ここでは,植物を育てる他,観賞する,調理する,加工する等の植物に関するいろいろな活動も含める)を通してのコミュニケーションや,五官が受ける刺激等のプロセスが癒しにつながることを強調された.また,大がかりな設備がなくても,たった一鉢の植物であっても園芸療法は可能であるということもお話しされた.

パネルディスカッション
園芸と環境緑化 及川俊郎氏(環境緑化ボランティア,花き生産者)
 脱サラをして花百姓として活動してきた,これまでのことについてお話を披露された.

市民農園とその現状 谷々兼慶氏(市民農園実践家,みちのく湖畔公園勤務)
 川崎町すずらん農園の紹介.また,「杜の都・仙台」に対する提言をされた.

世界に広がる市民農園 金浜耕基氏(東北大学大学院農学研究科教授)
 1998年8月にベルギーで開催された国際園芸学会での市民農園に関するシンポジウムの内容について講演された.また,ドイツの市民農園(クライン・ガルテン)について,その始まりであるシュレーバー協会とヨハニスタール・クライン・ガルテン協会のことを紹介された.さらに日本とドイツの市民農園の比較を行い,日本の市民農園のあり方について提案された.

平成11年度園芸学会東北支部賞授与式ならびに受賞者講演会

研究部門賞:佐久間光子氏(福島県農業試験場) 「リンドウの組織培養による増殖及び超低温保存に関する研究」
 栄養繁殖の困難なリンドウの,組織培養を利用した大量増殖のための培養系の確立,越冬芽形成の要因,優良個体およびF1採種用親株を長期的に維持・保存するための超低温保存技術について研究を行った.

普及部門賞:石川満夫氏(宮城県迫地域農業改良普及センター,現:仙台地区農業改良普及センター) 「宮城県北部における野菜産地育成」
 中田町上沼北区地区における夏秋キュウリの組織的な生産地域の形成と,それに関わった普及所(普及センター)の取り組みについて.

研究発表会


課題番号26 デルフィニウム切り花の品質低下に伴う糖代謝酵素活性の変動
菊地 郁・金山喜則・金浜耕基(東北大農学研究科)

 デルフィニウムの小花は,がく片が萎れ,雌ずいが発達することで切り花としての品質が低下する.小花の品質低下に伴う新鮮重,乾物重および可溶性タンパク質含量の変動と,それに関わる糖代謝酵素の分析を行った.その結果,がく片の萎れには細胞壁結合型と思われる不溶性インベルターゼの,雌ずいの生長には不溶性インベルターゼとスクロース合成酵素活性の関与が示唆された.

課題番号30 トマトへのフルクトキナーゼアンチセンス遺伝子の導入
小田中佐保里・元橋知子・金山喜則(東北大農学研究科)

 グルコースの2倍の甘さを持つフルクトースの代謝酵素であるフルクトキナ−ゼ(Frk)をアンチセンス法により制御し,フルクトースの蓄積を試みた.Frk1では,対照と比較してフルクトキナーゼ活性が明らかに低い個体は得られず,果実の糖組成にも変化は見られなかった.Frk2に関しては,フルクトキナーゼ活性の低い個体がいくつか得られたが,やはり糖組成については変化は見られなかった.

課題番号40 気温によるキャベツの収穫期,収穫球重の予測
武田 悟(秋田農試)

 キャベツの収穫期,収穫球重を,日平均気温を用いて予測する方法について検討した.日平均気温に対応する生育速度から収穫期を,任意に区切った生育期間の気温から収穫球重を推定した.これに用いた予測手法は実用的であり,信頼性が高かった.

課題番号42 宮城県内のイチゴ産地における日射量推定値と単位面積当たり収量の関係
岩崎泰永1,川村 宏2,棚橋修一3,遊佐裕行41宮城園試,2東北大理,3富士通(株),4仙台リサーチセンター)

 仙台リサーチセンター(SRC)が提供している日射量推定値を基に,促成栽培イチゴについて地域ごとの日射量と収量の相関関係を調査した.その結果,日射量は収量に対する直接的な影響とともに地域の生産組織にも影響を及ぼしていることが考えられた.
(編者注:SRCから提供されている日射量推定データは,東北農業試験場のホームページで公開されています.当ページからリンクしておりませんが,サーチエンジンで検索することが出来ると思います.)

課題番号44 四季成り性イチゴ‘サマーベリー’の花芽形成が停止した株に及ぼす温度と日長の影響
西山 学・海老原康仁・金浜耕基(東北大学農学部)

 これまでは,栄養成長と生殖成長が同時に起きている四季成り性イチゴの花芽形成に及ぼす環境の影響について調査してきたが,今回は,生殖成長が停止した株を供試して同様の実験を行った.その結果,20/15℃の低温の場合,日長に関わらず花房が発生したが,30/25℃の高温の場合,13時間では花芽分化しなかったが,24時間日長では処理区の中で最も多く花房が発生した.このことは,‘サマーベリー’の花芽形成は,20/15℃では日長の影響はほとんど認められないが,30/25℃では日長に依存することを示している.

イチゴ小集会

 秋田県,宮城県,山形県,福島県,北海道の四季成り性イチゴの品種育成の歴史,現状,問題点について各県の代表者から話があった.また,東北地方と北海道で四季成り性イチゴの共同研究(情報の交換等)を行うことを目的として,東北・北海道ブロックイチゴ研究会が発足した.初代研究会長は宮城県園芸試験場長の庄子孝一氏.


園芸学会東北支部平成11年度大会   学会報告のトップに戻る