研究ハイライト&トピックス

2016/05/30

酵母を利用したスクリーニングによってアルツハイマー病の原因となるアミロイドβの生成抑制に成功

写真:二井准教授

二井 勇人 准教授

(分子酵素学分野)

専門

分子酵素学/生化学/細胞生物学

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γセクレターゼは、疎水的な細胞膜に存在する膜貫通タンパク質の膜貫通領域を加水分解するという、古典的な生化学の常識からはありえない反応を行うプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)です。この酵素は、アミロイド前駆体(APP)を切断してアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβ(Aβ)を生成することから、病気の治療を念頭において研究が進められてきました。同じような分解反応を行うプロテアーゼも見つかってきて、現在では、“膜内切断プロテアーゼ”として認知されていますが、その分解機構については未だに明らかではありません。

γセクレターゼは、4つの膜タンパク質(プレセニリン(PS1)、ニカストリン、Aph1、Pen2)からなる複合体であり、切断活性を試験管内で解析するには、界面活性剤を使って膜から溶かし出す必要があり、技術的な困難が伴います。私達は、酵母をいわば「生きた試験管」として、ヒトγセクレターゼとアミロイド前駆体の遺伝子を導入し、酵母の生き死にでアミロイドの生成を判定するスクリーニング系を構築しました。酵母での解析には、①酵母には対応するホモログ分子がないので、導入したγセクレターゼ以外はAPPを切断できず感度の高い評価系となる、②タンパクの高発現が期待でき、遺伝学的手法によってアミロイドの形成に影響する因子(遺伝子、タンパク、化合物、天然物)を容易に研究できるという2つの利点があります。私達は、家族性アルツハイマー病の遺伝子変異を持つ、プレセニリン(PS1)変異体で低下したγセクレターゼ活性を回復させるスクリーニングを行いました。その結果、新たな変異によってアルツハイマー病PS1変異体の活性が回復し、さらに、切断の異常が解消されて、Aβの生成が抑えられることを発見しました。私達の酵母を使ったユニークなスクリーニング系は、認知症の治療薬開発への応用が期待されます。現在、企業と共同して、化合物スクリーニングを行っています。

<発表論文>
雑誌名:J. Biol. Chem. 291, 435-446 (2016)
論文名:Suppressor mutations for Presenlin 1 familial Alzheimer Disease mutants modulate -secretase activities.
著者名:Eugene Futai, Satoko Osawa, Tetsuo Cai, Tomoya Fujisawa, Shoichi Ishiura, Taisuke Tomita

 

二井先生 研究室の様子

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