研究ハイライト&トピックス

2017/01/13

そっくりだが別種だった! 表紙を飾る2匹のゴカイの仲間

大越 和加 准教授

(生物海洋学分野)

専門

多毛類生態学、生物海洋学

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ドロオニスピオというゴカイの仲間は、干潟の「普通種」としてよく知られ、学術論文や環境アセスメントの報告書に頻出する種です。世界各地に生息し、日本でも仙台湾や東京湾等の内湾に多数生息しています。日本では数十年にわたって「1種」とされていた本種をよく調べた結果、本種とされていた種は1種ではなく、もう1種(アミメオニスピオ)含まれていることがわかりました。両種は遺伝子でも形態でも、生活史(本論文では未発表)でも区別することができます。これまで様々な論文や報告書でドロオニスピオとされてきた種はどちらなのか、2種が混在していたのか、再検討が必要になるとともに、両種の生息状況の違いから、より詳細な環境情報を得ることができるようになりました。

今日、環境に関する理解と保全がますます求められている一方で、世界各地の沿岸で身近な干潟が埋め立て等により失われています。干潟には、多様なベントス(底生生物)が生息し、生物生産性や水質浄化能力が高い豊かな生態系が形成されています。近年、干潟は、水産資源生物の幼稚子をはじめとするいろいろな生物の初期生活史を支える生育場として、また種々の生物の餌資源となるベントスの生息場として、そして生態系サービスの観点からも重要な水域であることが再認識され、生態系保全のための生物・環境調査研究が行われています。

干潟の砂泥底に生息する主なベントスの構成群として、環形動物門多毛類(ゴカイの仲間)、貝類、甲殻類が知られています。今回、われわれの研究チーム(現東邦大学理学部の阿部博和博士研究員、東北大学大学院農学研究科の近藤智彦大学院生、大越和加)は、多毛類2種、アミメオニスピオとトラオニスピオ(いずれも新和名提唱)の形態とrDNA遺伝子の塩基配列を初めて報告しました。また、アミメオニスピオは、東アジアを中心に広く分布するとされる干潟の「普通種」ドロオニスピオと形態が類似していることから、これまで日本では混同され「発見」が遅れたこと、しかも2種は同所的に出現することを明らかにしました。日本の干潟ではしばしば多産する「普通種」ドロオニスピオは、魚類などの重要な餌資源として物質循環への寄与が大きいと言われてきましたが、本研究の結果から、場所や時期によってはそのほとんどがアミメオニスピオである可能性も出てきました。両種は、幼生の発生様式などの生態に明確な違いがあることも明らかになっており(論文投稿中)、今後は2種を区別し、それぞれの特性や機能を解明していく必要があります。東アジアの干潟に普通に生息するドロオニスピオの中に異なる種が含まれていたという本研究による発見は、これまで見過ごされていた生物の多様性に光を当てるものであると同時に、干潟生態系を構成するベントスの分類学的・生態学的研究がまだ不十分な状況にあることを示唆しています。干潟の生態系の構造や機能、生物多様性を理解するためには、このような基礎知見の集積が今後も重要です。

<発表論文>
雑誌名:Zoological Science 33, 650-658 (2016)
論文名:First report of the morphology and rDNA sequences of two Pseudopolydora species (Annelida: Spionidae) from Japan
著者名:Hirokazu Abe, Tomohiko Kondoh, Waka Sato-Okoshi

 

2種のゴカイの写真

Zoological Science表紙に掲載されたゴカイ2種の頭部背面の写真.左: ドロオニスピオ 右:アミメオニスピオ

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