研究ハイライト&トピックス

2018/07/17

テラヘルツ光がアクチンタンパク質の繊維化を促進
新しい細胞機能操作の可能性

本学農学研究科の山崎祥他博士(現理化学研究所テラヘルツイメージング研究チーム基礎科学特別研究員)と原田昌彦准教授らは、京都大学大学院農学研究科の小川雄一准教授、理化学研究所テラヘルツイメージング研究チーム保科宏道上級研究員、福井大学遠赤外領域開発研究センターの出原敏孝特任教授らと共同で、テラヘルツ(THz)光注1照射によりアクチンタンパク質の繊維構造形成が促進されることを明らかにしました(図1)。

近年THz光領域の高強度光源が目覚ましい発展を遂げており、その照射による物質操作の可能性が探索されています。THz光は一般的な光操作技術で使われている可視光に比べて光子のエネルギーが低いため、分子構造を破壊しにくいという特徴があります。そのため、生体分子のような大きな分子を変性させること無く、その高次構造を「ソフトに」変えることが可能であると期待されます。

アクチンは繊維化して細胞骨格構造を形成する主要タンパク質で、皮膚の傷が治る際の細胞の移動や、癌細胞の浸潤・転移などにもアクチンが中心的な役割を果たします。さらに細胞核内のアクチンが遺伝子の機能を制御し、遺伝子初期化(万能細胞形成)にも関与することが知られています。本研究では、ジャイロトロン注2を光源としたTHz光照射(0.46 THz)を行いながら、アクチンの重合(繊維化)をモニターし、THz光がアクチンの繊維形成に与える影響を評価しました。その結果、アクチン繊維の形成がTHz光照射によって顕著に促進される事が明らかになりました。

アクチンは様々な細胞機能に関与するタンパク質であることから、これまでにもその繊維形成に影響を与える薬剤が多数開発され、医療応用も進められています。しかし、これらの薬剤を瞬時に細胞内に運んだり、取り除いたりすることは困難でした。本研究で発見したTHz光照射によるアクチンの繊維化は、このような問題を生じることなく、直接細胞内のアクチン機能を操作できる可能性を示しています。THz光の生体への影響が小さいこととあわせ、本研究の成果が、安全で効率的な細胞機能の操作技術開発に繋がることが期待されます。

本研究成果は、2018年7月3日、英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。



図1. 本研究の概要。(左)細胞内でアクチンは繊維を形成して細胞骨格を形成することが知られています。(右)細胞から取り出したアクチン単量体が重合し、アクチン繊維を形成する過程にTHz光を照射したところ、その繊維化が促進されることが明らかになりました。

<発表論文>

タイトル: Actin polymerization is activated by terahertz irradiation
著者名: Shota Yamazaki*, Masahiko Harata*, Toshitaka Idehara, Keiji Konagaya,Ginji Yokoyama, Hiromichi Hoshina, Yuichi Ogawa* (* Corresponding authors)
雑誌名: Scientific Reports, DOI: 10.1038/s41598-018-28245-9

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