研究ハイライト&トピックス

2018/09/04

酵母の呼吸から発酵への転換期における細胞膜輸送体の分解機構を解明

酵母Saccharomyces cerevisiaeは真核生物のモデル生物として基礎研究に用いられると共に、世界中で古くからアルコール発酵に用いられてきました。S. cerevisiaeは酸素存在下でもグルコースなどの発酵性炭素源(自然界では、果実、樹液や花の蜜)があれば呼吸ではなくアルコール発酵を行う一風変わった生き物でもあります。他の炭素源があっても、発酵性炭素源が優先的に消費されます。環境中の発酵性炭素源を使い果たすと、それまで主流だった解糖系—発酵によるエネルギー生産から、呼吸を中心としたエネルギー生産に転換し、遺伝子発現が大きく変化します。本研究の対象であるJen1は原形質膜に局在する乳酸・ピルビン酸輸送体であり、その発現は発酵から呼吸への転換(つまり、グルコースの枯渇)によって著しく活性化します。しかし、再び発酵性炭素源が流入してくると、原形質膜上にあるJen1は速やかに分解されます。

本研究科の藤田翔貴博士(日本学術振興会特別研究員PD)は、新谷尚弘准教授と共同で、グルコースに応答してJen1が選択的に分解される仕組みを明らかにしました。呼吸期の酵母細胞がグルコースに曝されるとJen1のC末端の領域が、Rod1−Rsp5ユビキチンリガーゼ複合体により認識・ユビキチン付加され、エンドサイトーシスを介した液胞での分解へと導かれます。このC末端領域(20アミノ酸残基)を他の異なる制御下にある輸送体(メチオニン輸送体)に融合すると、グルコースおよびRod1依存的に分解されました。すなわち、この領域はRod1依存的なグルコース応答性のデグロン(分解制御領域)であると言えます。この成果はS. cerevisiaeにおける栄養源変化に応答した栄養取込み制御機構の解明だけでなく、哺乳類における糖の取込み制御の解明にも貢献することが期待されます

本研究成果は、米国生化学・分子生物学会誌Journal of Biological Chemistryの2018年7月13日号に掲載されました。



<発表論文>

タイトル: The C-terminal region of the yeast monocarboxylate transporter Jen1 acts as a glucose signal-responding degron recognized by the alpha-arrestin Rod1
著者名: Shoki Fujita, Daichi Sato, Hirokazu Kasai, Masataka Ohashi, Shintaro Tsukue, Yutaro Takekoshi, Katsuya Gomi, Takahiro Shintani
雑誌名: Journal of Biological Chemistry, 293, 10926-10936 (2018)
DOI: 10.1074/jbc.RA117.001062

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