河川流量QはH-Q式により算定され、水位Hの観測データは十分存在する。一方、水質データが必ずしも十分取得されていないが、水質の計測数を増やすことは難しく現実的にはモデル式を用いて推定するしかない。このため代表的な負荷推定手法である原単位法とLQ法の適用性を検討した。
結果主要な結果
主要な結果
No | 質問 | 回答 |
1 | ADCPの精度は? | 洪水流で河床が移動しているので、ボトムトラックによる対地速度の扱いには注意が必要である。また、流速の空間勾配が大きい場所ではビームが広がることが流量の観測精度に影響するので注意すべきである。 |
2 | 横断方向の土砂濃度分布の計測方法は? | 横断方向に複数の測点を設け、各測点毎に鉛直方向に濁度センサーを昇降させ計測を行った。なお、洪水流によりセンサーの降下に手間取ったが、センサーに取り付けるウエイトを随時追加し重さを調整することで問題をある程度解決した。 |
3 | LQ式のTN、TPの推定精度は? | TNの推定精度は悪い。一方、TPはSSと、またSSはQと相関が強く、精度は良い。 |
4 | LQ式において、ある流量を境にして負荷が急変しているがその理由は? | 流量がある閾値よりも大きくなると水路にたまった汚濁物質がフラッシュされるので負荷が急増する。なお、河床勾配の違いによってもLQ式の特性は変わってくるので注意が必要である。 |
5 | 負荷量の将来予測をするには原単位法の方が適切では? | ご指摘の通り、原単位を合理的に与えられればLQ式よりも原単位法のほうが適切かもしれない。 |
通常、流量QはH-Q式より算定され、水位Hのデータは充実している。一方、水質に関してはデータ不十分である。しかしながら、水質の計測サンプル数を増やすことは難しいので、現実的にはモデル式を用いて推定するしかない。現状では原単位法あるいはLQ式が用いられるが、これらの推定法には適用限界がある。特に負荷の非定常変化や降雨イベント時における推定精度が悪くなる。
土砂濃度を実測すると、物質の濃度分布は横断面内でかなり大きな変化を示していることから、現状における実測の河川水質データから負荷のフラックスを算定することにも誤差が含まれていると言える。
沿岸域の水質シミュレーションにおいて、便宜上、負荷のフラックスが求められる実測値存在地点よりも下流側において(より海に近い部分)河川の負荷が与えられることが多いが、それら両区間の間に流入する負荷や水質変換過程によって、両区間の負荷のフラックスは一致しない。
流域からの流入負荷量の推定精度について議論すると同時に、どの程度の時間分解能が必要か?どの位置における結果が必要か?河川上流から河口域にかけての負荷の変化は?といった問題についても同時に明らかにしていく必要がある。結局、「定量的な正解が分からない」ということが一番の問題である。したがって、差し当たっては1流域に限ってもいいので、「負荷流入の実態」を明らかにするような集中観測を実施することが望まれる。
また、分布型の水/物質循環モデルの適用も近年可能になりつつあるが、その際、各格子上で負荷の原単位を与える必要があり、このような精緻な数値モデルの計算精度はやはり原単位依存型のモデルとなっている。そのため、数値計算技術の高度化と同時に、流域における面源負荷の原単位、特に都市域の路面や屋根面負荷の実測データを蓄積していくことが不可欠である。