流入負荷の実態(二瓶氏)

発表要旨

  1. 代表的な原単位法とL-Q式の適用限界を明らかにし、改良モデルを提案した。

    河川流量QはH-Q式により算定され、水位Hの観測データは十分存在する。一方、水質データが必ずしも十分取得されていないが、水質の計測数を増やすことは難しく現実的にはモデル式を用いて推定するしかない。このため代表的な負荷推定手法である原単位法とLQ法の適用性を検討した。

    結果
    • 降雨時における原単位法に適用限界があることが明らかになった。
    • ノンポイントソースに対する原単位の文献値のばらつきが大きい(COD原単位は10〜1000のオーダで違いがある)。
    • 不浸透面積率とCOD原単位の相関を調べたが明確な関係性は認められない。
    • 屋根面/路面堆積負荷調査を実施:観測結果を用いてSPMの沈積・堆積を考慮した非定常屋根面・路面堆積負荷モデルを構築した。
    • 区間代表法、LQ法いずれも洪水時における推定精度が低いことを確かめた。
  • 河口と環境基準点の土砂フラックスの違いを実測した。

      主要な結果

    • 出水イベント時にズレが大きくなることが確かめられた。
  • 流量と土砂輸送量に関する既存観測手法の精度を検討した。

      主要な結果

    • 流量に関しては、2−3割の計測誤差が存在した。
    • 土砂輸送量に関しては最大5割程度の誤差があり、採水地点の選定により結果が大きく変わることが土砂濃度の横断分布データにより確かめられた。
  • 質疑応答

    No質問回答
    1 ADCPの精度は? 洪水流で河床が移動しているので、ボトムトラックによる対地速度の扱いには注意が必要である。また、流速の空間勾配が大きい場所ではビームが広がることが流量の観測精度に影響するので注意すべきである。
    2 横断方向の土砂濃度分布の計測方法は? 横断方向に複数の測点を設け、各測点毎に鉛直方向に濁度センサーを昇降させ計測を行った。なお、洪水流によりセンサーの降下に手間取ったが、センサーに取り付けるウエイトを随時追加し重さを調整することで問題をある程度解決した。
    3 LQ式のTN、TPの推定精度は? TNの推定精度は悪い。一方、TPはSSと、またSSはQと相関が強く、精度は良い。
    4 LQ式において、ある流量を境にして負荷が急変しているがその理由は? 流量がある閾値よりも大きくなると水路にたまった汚濁物質がフラッシュされるので負荷が急増する。なお、河床勾配の違いによってもLQ式の特性は変わってくるので注意が必要である。
    5 負荷量の将来予測をするには原単位法の方が適切では? ご指摘の通り、原単位を合理的に与えられればLQ式よりも原単位法のほうが適切かもしれない。



    現状把握




    問題解決の戦略・戦術の提言

    流域からの流入負荷量の推定精度について議論すると同時に、どの程度の時間分解能が必要か?どの位置における結果が必要か?河川上流から河口域にかけての負荷の変化は?といった問題についても同時に明らかにしていく必要がある。結局、「定量的な正解が分からない」ということが一番の問題である。したがって、差し当たっては1流域に限ってもいいので、「負荷流入の実態」を明らかにするような集中観測を実施することが望まれる。

    また、分布型の水/物質循環モデルの適用も近年可能になりつつあるが、その際、各格子上で負荷の原単位を与える必要があり、このような精緻な数値モデルの計算精度はやはり原単位依存型のモデルとなっている。そのため、数値計算技術の高度化と同時に、流域における面源負荷の原単位、特に都市域の路面や屋根面負荷の実測データを蓄積していくことが不可欠である。