東北大学 大学院農学研究科

 酵 素 化 学 分 野 Laboratory of ENZAYMOLOGY

ベノミクス:加速進化の分子機構解明

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毒ヘビやサソリ、毒グモなど毒動物は、独自の進化により毒を生産する外分泌腺組織のほか、毒牙や針、銛、刺胞など特殊な器官も持つ。その毒素はVenomと呼ばれ、100種を超える多種多様なペプチド、タンパク質のカクテルとなっている。これらは混合物としては様々な標的部位に働き生体機能を撹乱する毒として働くが、一つ一つの成分を取り出すとそれらの高い特異性から生命の複雑な仕組みを解くためのツールとして、また医薬リードとして利用できる。私たちは、これまでヘビ毒タンパク質の多様な機能が加速進化によって獲得されてきたことを明らかにしてきました。そして現在、この毒生物のベノムシステムがどのようにしてできたのか?、また、どのようにして多様な毒タンパク質・毒ペプチドが標的タンパク質の構造を特異的に認識できるように加速進化してきたのか?、あるいはその加速進化を生む分子機構はどうなっているのか? さらには新薬開発に直接結びつくような新たな毒タンパク質(医薬リード)を発見するために、ハブベノミクスプロジェクトとしてハブ全ゲノム(1.8 Gb)の解読を九州大学,OIST,崇城大学,東京大学,名古屋大学との共同研究ですすめている。 また,タンパク質工学や細胞生物学的手法により,多様な毒成分(筋壊死因子PLA2やセリンプロテアーゼ,C型レクチン様タンパク質,3本指型トキシンなど)の構造と機能,メカニズムを明らかにし、毒蛇咬傷の治療、軽減に資する研究を進めています。

ハブベノミクスプロジェクト

【参考文献など】

Ogawa et al., Toxicon 45, 1-14 (2005).

Ogawa, Mol. Div., 10(4), 511-514 (2006).

小川, ベノミクス:毒生物ゲノムプロジェクト, BIO Clinica, 24, 65-71 (2009).

Seto et al., Protein Exp. Purif., 58 (2), 194-202 (2008).

特願2005-254236 ポリペプチドの製造方法およびキット

東北大学大学院農学研究科農芸化学専攻

生物化学講座 酵素化学分野

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