東北大学 大学院農学研究科
COPII輸送小胞形成の分子機構
酵母からヒトにいたるあらゆる真核生物の細胞内は、分化したオルガネラで満たされています。オルガネラが独自の役割を果たすために必要なタンパク質は、輸送小胞によるダイナミックな輸送経路(メンブレントラフィック)を介して運ばれます。
輸送小胞は、直径が約 60 nmの小胞です。コートタンパクによって積み荷となるタンパク質を積み込まれて形成された後、目的となるオルガネラまで輸送され、そのオルガネラ膜と融合して、タンパク質を輸送します。私達は、小胞体からゴルジ体への輸送を担うCOPII小胞の形成メカニズムをリポソームを使って研究してきました。COPII小胞は、小胞体で積み荷タンパク質を積み込み、ゴルジ体へと送り出します。
コートによる小胞形成の過程では、
1)小胞体の膜を変形して小胞を”出芽”させ、
2)積み荷となる膜タンパク質を積み込み、最終的に
3)小胞を小胞体から分離させます。
これらの過程は、コートタンパク質によって行われる非常に”動的”な過程です。私達は、人工膜(リポソーム)からCOPII小胞を作り出す(再構築する)ことによって、輸送小胞形成の原理を明らかにすることを目指しています。
私達の研究内容は高く評価され、Randy Schekmanのノーベルレクチャー(2013年医学生理学賞)でも引用されています。50分にわたる長めのレクチャーですが、興味のある方は是非ご覧ください。
【画像の説明】リボソームから生成させたCOPII輸送小胞の電子顕微鏡写真(左;Futai et al., 2004)と蛍光顕微鏡画像(右;Bacia et al., 2012)。
蛍光画像では、リボソーム(赤)からCOPIIコートタンパク(緑)に覆われた小胞が出芽する様子が見られる。
【参考文献】
LF Kung, S Pagant, E Futai, et al., Sec24p and Sec16p cooperate to regulate the GTP cycle of the COPII coat. The EMBO journal 31 (4), 1014-1027
K Bacia, E Futai, et al., Multibudded tubules formed by COPII on artificial liposomes
Scientific reports 1 (1), 1-6
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東北大学大学院農学研究科農芸化学専攻
生物化学講座 酵素化学分野
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