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専門分野 植物病理学 の、宮下脩平 博士へのQ&Aです。

Q1.その植物病理学について簡単に紹介してください。

    植物に病気を起こす病原体はいろいろといます。糸状菌(カビ)、細菌(バクテリア)、ウイルスなどです。これら病原体の生存戦略や病気を起こす仕組み、植物がこれらの病原体に対抗する仕組みを明らかにすることで、作物の安定的な生産に寄与しようとする学問です。私自身は植物ウイルスを専門にしており、東北大学に来てからはキュウリモザイクウイルスを主に研究しています。キュウリ以外にもいろいろな植物に感染する厄介なウイルスです。アブラムシが伝搬します。

Q2.植物病理学の研究者になった決め手は何ですか?

    学部生時代に食糧問題の解決に寄与する研究に携わりたいとぼんやり思っていたところ、世界では植物の病気で毎年8億人分の食糧が失われていると知り、自分にも何かできないかと思って植物病理学の研究ができる研究室に入りました。その後は幸いにも同じ研究領域で研究を継続できています。

Q3.では、子供の頃になりたかった職業は何ですか?

    木工職人(未就学期)→建築家(小学生)→特になし(中学生)
    モノづくりに興味があったのですが、徐々にハードからソフトに移行して、いまは理論寄りの研究をしています。新しい実験系をデザインするのが好きなので、そういう意味では変わっていないかも知れませんね。数年前に著名な建築家の安藤忠雄がテレビで「建築家は他人の金で好き勝手出来て楽しそうに見えるかも知れないが、顧客の言うことをうまく取り入れたりするのは結構大変なんだ」という意味のことを言っている(愚痴っている?)のを見ました。研究者も好きなことができている側面と結構大変な側面があって、安藤忠雄でもそうなら仕方ない、と思いました。話が逸れましたね。

Q4.ご自分を動物に例えるなら、何だと思いますか?

    動物には詳しくないので難しい質問ですね。といって、ウイルスに例えるのも難しいのですが。たぶんキュウリモザイクウイルスというよりはトマトモザイクウイルスです。

Q5.最近の一番うれしかったことを教えてください。

    IKEAでキュウリモザイクウイルスの粒子と同じかたちの照明を見つけて買ったこと。組み立て式で60枚の三角形を枠にはめ込んでいくという、常識的に考えれば非常に面倒くさいものですが、三角形の各頂点に外被タンパク質が一つずつ対応するのを知っていると俄然楽しくなってきます。

    キュウリモザイクウイルスと同じかたちの照明
      

Q6.では、最近の失敗談を教えてください。

    土曜日の朝の資源ごみ回収を毎週のように逃しています。ティラン、ティラン、ティティラタララン~(資源ごみ回収車の音楽が私にはこう聞こえます)と聞こえたらもう間に合いません。潔く負けを認めます。

Q7.海外での経験をお聞きします。今までに訪問したことのある国を教えてください。

    アメリカ、カナダ、オランダ、フランス、オーストラリアです。空港だけならこれにドイツとUAEが加わります。UAEはやはり暑かったです。

Q8.その中で、1番気に入った国はどこですか?

    やはりオランダですね。東北大学大学院農学研究科の拠点形成事業(本事業)、新学術領域「ネオウイルス学」の国際交流事業、東北大学の「若手リーダー研究者派遣プログラム」で合わせて9か月行かせていただきました。感謝しています。居心地のいい国でした。

Q9.それはどういうところでしょうか?

    親切な人が多いところです。特に子供連れには老若男女問わずとても親切でした。街ではたいてい英語が通じて、嫌な顔をされないところも助かります。むしろ英語での会話を楽しんでいる店員さんも多い気がします。あ、俺の英語ちゃんと通じた、みたいな感じで。実はこっちもそう思っているのは秘密です(笑)英語のテレビ番組を日常的に見ているからか、多くの人が慣れているようです。国が小さいのでテレビ番組を全て自前で賄っていないようです。日本もいつかそうなるのかもしれませんね。
 

10.おいしいな、と思った料理(食べ物)は何ですか?

    オランダにはビタボーレンという、コロッケみたいな食べ物があります。マスタードをつけて食べます。たこ焼きくらいのサイズの球形で、中もたこ焼き同様に熱々トロトロです。ビールによく合います。オランダの夏は夜10時くらいまで明るいので、店先に並んだテーブルや家のベランダで大いに楽しめます。

    ビタボーレン

Q11.おいしそうに見えたのに、食べたらがっかりしたものはありましたか?

    不思議とありません。食い意地が張っているせいか、おいしくないものを回避する能力に長けているのかもしれません。

Q12.海外滞在中に、再発見した日本(日本人)のよいところはありましたか?

    日本は治安がいいのがありがたい、と思います。でも人間の根本的な部分はどこの国でもそう変わらないのでは、という気がします。その場、その時代の状況に良くも悪くも影響を受けて「国民性」らしきものがあるような。例えばオランダ人と同じ親切心を日本人も持っていると思いますが、それをオープンにするまでの心理的なハードルの高さが違うだけかもしれません。

Q13.旅行(観光)に行くなら、お薦めの国はありますか?

    オランダの博物館・美術館は名作を間近で見られるのでお勧めです。なんと微生物博物館(Micropia)というのもあり見せ方の工夫が面白い場所でした。オランダではアートとサイエンスの距離が近いような気がしています。また、雰囲気のいい街が大小いろいろあって、Delft、Haarlem、Leiden、Amersfoortが特に気に入りました。またオランダは大胆な建築が多くて、興味がある方にはおススメです。

    Micropia 
    上:ウイルス粒子をかたどったガラス細工(手前からヒト免疫不全ウイルス, エボラウイルス, たぶんT4ファージ)、下左:糸状菌コレクション、下右:スキポール空港の壁面広告(83,5000の人間と桁違いに多数の微生物が住む街、アムステルダムへようこそ)

    オランダのおもしろ建築 
    左上:Amersfoort駅、左下:Rotterdam駅前、右上:Rotterdamの橋とズレてるビル、右中:Rotterdamの市場、右下:Leiden駅

Q14.今、目の前にドラえもんの道具、「どこでもドア」があったら、どこに行ってみたいですか?

    エチオピア。
    遺伝資源が豊富な場所として知られています。急峻な崖の上とか、どこでもドアでサンプリングし放題(ただし名古屋議定書に則って)。研究室にエチオピアからの留学生がいるので、彼の家族にも挨拶したいですね。でもコロナウイルス拡大予防のため、どこでもドアの前で往復それぞれ2週間待つことになりますかね。
    (編注:2020年6月に行ったインタビューです)

Q15.食生活についてお聞きします。好きな料理や料理ジャンルは何ですか?

    飲みたいお酒に合わせて料理を準備するのが好きなので、いろいろです。いま楽しみにしているのはグリーンカーテンのゴーヤでゴーヤチャンプルを作ってビールを飲むことです。でもゴーヤにすでにアブラムシがたくさん来たので、ウイルス病が出てしまうかもしれません。

Q16.子供時代には嫌いだったけれど、大人になって好きになったものはありますか?

    そばぼうろ。どうして嫌いだったのでしょうね。

Q17.また、今でも苦手なものはありますか?

    キノコ全般が苦手です。カビアレルギーがあるので、それとの関連を疑っています(キノコとカビはいずれも糸状菌)。よく茹でると大丈夫なので、タンパク質が変性して問題がなくなるのでしょうか。

Q18.学生時代の学食の思い出をお聞かせください。

    博士後期課程の学生時代、共同研究でお世話になっている先生と偶然学食でご一緒したのですが、その時の先生の言葉を不思議と覚えています。「宮下さんはまだ若いから研究以外の職業でも楽しく生きていけると思っているでしょうが、そのうち研究でしか生きていけなくなりますから。私自身、若いころはそう思っていました。」理論研究の非常に優れた研究者で、研究しか眼中になかった方だと思いこんでいたので、勝手に驚いたのを今でも思い出します。研究で腰を据えて生きていきなさい、という励ましだったのだと思って今も感謝しています。その時に自分が何を食べていたかは全く覚えていませんが、食事にはデータや数式を前にしてはできない会話を成立させる力がある、と言えば学食の思い出として何とかまとまるでしょうか。

Q19.今、1か月の休暇が取れることになりました。どのように使いますか?

    北アルプス縦走に挑戦します。いろいろ考えたけれど現実的なところに落ち着きました。

Q20.今後、研究者として、どのように過ごしていきたいですか?

    他人とは違う視点から、新しい常識を生み出す研究者でありたいと思っています。

Q21.最後になりましたが、食の安全性とは、何だと思いますか?

    次世代に引き継がねばならないもの、でしょうか。頑張ります!
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