園芸学会平成11年度春季大会の報告

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 本年度の園芸学会春季大会は, 4月 3日, 4日に,筑波大学において行われました.
 発表の課題数は,ポスター75件,果樹65件,野菜66件,花卉58件,利用30件でした.本研究室では西山が口頭発表をしました.ここでは,口頭発表の一部とポスター発表の一部について紹介します.


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研究発表


T.ポスター発表

課題番号45 赤色光/遠赤色光比がハクサイ,ダイコンおよびホウレンソウの花成に及ぼす影響
山崎博子1・大井 龍2・濱野 恵1・大和陽一1・三浦周行11野菜茶試,2三井化学(株))

 赤色光・遠赤色光比(R/FR比)を変化させた条件で長日植物のハクサイ,ダイコン,ホウレンソウの出雷の早晩を調査したところ,ハクサイ,ダイコンではFR抑制区で遅れ,ホウレンソウではFR抑制区で早まった.

課題番号58 低温に遭遇しないチューリップ球根の生育開花
大久保敬1・井上めぐみ1・M. Saniewski2・L. Kawa-Miszczak2・E. Wegrzynowicz-Lesiak21九州大農学部・2Research Institute of Pomology and Floriculture, Poland)

 チューリップの開花に及ぼす根の有無の影響を調査したところ,球根が低温に遭遇していなくても,根を除いてジベレリン処理を行えば開花に至った.葉の先端にIAAを処理しても茎の伸長は認められなかった.

U.野菜部会


課題番号48 ‘イチョウイモ’の花穂と新芋の発育に及ぼす日長と植物成長調整物質の組み合わせ処理の影響
吉田康徳1・高橋春實1・金浜耕基21秋田農業短大,2東北大農学部)

 ‘イチョウイモ’の花穂と新芋の発育に及ぼす日長と植物成長調節物質(ジベレリン,サリチル酸,ウニコナゾール,ジャスモン酸誘導体)の組み合わせ処理について調査した.主枝の長さは,8時間日長より24時間日長で長くなり,主枝に及ぼす植物成長調節物質の影響は8時間日長より24時間日長で差が大きかった.花穂の出蕾時期は,8時間日長と24時間日長区ともに,ウニコナゾール処理区で促進され,ジベレリン処理区で抑制された.新芋の新鮮重は,新芋の堀取り日・植物成長調節物質に関わらず24時間日長より8時間日長で大きかった.また,新芋の新鮮重は,両日長区ともジベレリン100ppm区で最も大きく,ウニコナゾール区で最も小さかった.

課題番号49 イチゴの収量に及ぼすPDJ化合物(ジャスモン酸誘導体)とGA3の混合処理効果
禿 泰雄1・松井鋳一郎21バル企画,2岐大農)

 ジベレリン単独処理とジベレリン+PDJ化合物(ジャスモン酸誘導体)がイチゴの収穫可販果数,果実重に及ぼす影響について調査したところ,第一花房ではジベレリン単独処理より混合処理によって収穫可販果数,平均果重が増加した.ジベレリンとPDJ化合物の比率,処理方法について検討する必要がある.

課題番号50 イチゴ果実の食味と糖・有機酸の含量および組成の関係
曽根一純・望月達也・野口裕司(野菜茶試久留米支場)

 食味の優れる品種は,糖含量およびスクロース比率が高く,有機酸含量が低い傾向が認められた.また,糖・有機酸の含量・組成からみた品種分類を行ったところ,日本品種は外国品種と比べ糖度の高い品種が多いことと,近年(1981年〜)の育種は糖含量を高め,有機酸含量を低下させる方向に進められてきたことが明らかになった.

課題番号51 休眠期における四季成り性イチゴ‘サマーベリー’の栄養成長と生殖成長
西山 学・海老原康仁・金浜耕基(東北大農学部)

 イチゴの休眠が最も深いといわれる11月から四季成り性イチゴ‘サマーベリー’に昼20℃/夜15℃の温度条件下で日長処理を行ったところ,発生した花房数と葉数は日長が長いほど多く,葉柄と花柄の伸長は12時間以下の日長で抑制され,14時間以上の日長で促進されることが認められた.

課題番号52 寒冷地における短日処理がイチゴの早生品種の収穫期に及ぼす影響
古谷茂貴・浜本 浩・安場健一郎(野菜茶試(盛岡))

 寒冷地の冷涼な気候を生かした短日処理による花芽分化を促進させる技術の開発を試みた.早生品種(‘女峰’)を利用した場合,花芽分化のための短日処理は20日以上で有効であり,端境期の9〜10月に生産可能で,収量は抑制栽培より多かった.

課題番号53 花芽分化時のイチゴにおける窒素および炭素の取り込み・分配に及ぼす窒素レベルの影響
山崎 篤1*・米山忠克2・田中福代2・田中和夫1・中島規子11野菜茶試久留米支場・2農研センター,*現在農研センター)

 イチゴの窒素レベルの低下による花成誘導における窒素(N)および炭素(C)の取り込み・分配パターンについて調べた.低Nにより花成が誘導された個体では,新たに同化されたCは根に多く分配され,新たに同化されたNは,クラウン,未展開葉,および茎頂に多く分配された.

課題番号55 アレチウリの花芽形成及び花の性表現に対する日長の長さと温度の影響
富澤博美・斉藤 隆(東京農業大農学部)

 アレチウリの花芽形成及び花の性表現に対する限界日長について,8時間の日長処理を1回行ったときより,2回行った場合で花芽形成の限界日長が長くなり,雌花形成の限界日長は雄花形成の限界日長より0.5〜1時間短いとみられた.また,短日処理時の暗期の温度としては20〜25℃が最適であり,それより高温でも低温でも花芽形成は起こりにくかった.

V.花き部会


課題番号27 天然型アブシジン酸とジベレリンの混合処理が生育と開花に及ぼす効果.(第六報)トルコキキョウの生育と開花に及ぼす効果
禿 泰雄1・村木尚司2・鄭新淑2・松井鋳一郎31バル企画,2揖斐川工業,3岐大農)

 天然型アブシジン酸誘導体(STC4771化合物)とジベレリン(GA3)の混合処理がトルコキキョウの生育開花に及ぼす効果を検討したところ,屋外での栽培では,夜冷の有無に関わらず,無処理より混合処理で生育促進と着蕾数の増加が認められ,二度切り栽培では,混合処理により生育と開花が促進された.

課題番号29 遠赤色光遮断パネルが数種花卉類の生育に及ぼす影響
鵜生川雅己1・福田直也2・吉中美湖3・伊藤暢子1・大井 龍4・高柳謙治21筑波大生物資源学類,2筑波大農林学系,3筑波大農学研究科,4三井化学(株))

 遠赤色光抑制による赤色光/遠赤色光比の変化が数種花卉類の生育に及ぼす影響について調査した.ポインセチア,ペチュニアの草丈は,光透過率が同じ場合,対照区より遠赤色光遮断区で抑制された.また,遠赤色光遮断により,長日植物のペチュニアの開花は遅くなり,短日植物のポインセチア,アサガオ,シソの開花は早くなった.

課題番号31 Kalanchoe blossfeldianain vitro における花成反応に及ぼす葉の着生位置と着生枚数の影響
秋間和宏・雨木若慶・樋口春三(東京農大農学部)

 in vitroにおいて短日植物のカランコエの花成反応に及ぼす葉の着生位置および着生枚数の影響を検討したところ,摘葉は花成反応を量的に抑制すること,2枚(1節分)の葉があれば花成刺激を感受できることが明らかになった.

課題番号43 トルコギキョウ切り花の受粉による老化促進におけるエチレンの役割
市村一雄・後藤理恵(野菜茶試)

 受粉がトルコギキョウの切り花の老化とエチレン生成に及ぼす影響について検討したところ,受粉により小花の花持ち日数が短くなり,エチレンの発生が認められた.また,2mMのSTS処理により受粉による老化促進を抑制できた.

課題番号45 ニホンスイセン切り花の葉の黄化に及ぼすジベレリンの影響
後藤理恵・市村一雄・向井俊博(野菜茶試)

 ニホンスイセンの切り花では,花の萎凋に先立つ葉の黄化が鑑賞価値を低下させるので,黄化抑制方法について検討した.その結果,ジベレリン処理がクロロフィル含量の低下を抑制させ,実用的に利用できると思われた.


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