ゲノム編集技術を用いて細胞質雄性不稔性の原因遺伝子証明
収量の多い一代雑種品種の育種に有用な形質に、細胞質雄性不稔性(CMS)と呼ばれるものがあります。CMSは核とミトコンドリアの相性が悪い時に、ミトコンドリアゲノムに存在するCMS原因遺伝子が発現し、雄性生殖器官(花粉や葯)に異常を引き起こして不稔になる現象です。
環境適応植物工学分野の鳥山欽哉教授らは、ゲノム編集技術の一つであるTALENにミトコンドリア移行シグナル配列を付与したベクターを用いて、CMSに関わると推定されたミトコンドリア遺伝子を破壊することでその遺伝子がCMSの原因であることを証明しました。これまで遺伝子改変が不可能であった植物ミトコンドリアゲノムの標的遺伝子破壊の3例目の報告となります。
具体的には、インディカ品種のTadukanのミトコンドリアと、ジャポニカ品種の台中65号の核を併せ持ったイネを育種することでCMSを作出しました。このTadukan型CMSイネのミトコンドリア遺伝子orf312をノックアウトすることで、種子結実が回復することを示し、orf312が細胞質雄性不稔性の原因遺伝子であることを証明しました。
この研究は、環境適応植物工学分野(大学院生の髙塚歩さん、鳥山欽哉教授)と九州大学・風間智彦准教授、東京大学・有村慎一准教授と共同で行ったものです。本研究成果は、国際誌The Plant Journalに掲載されました(2022年5月26日)。
【参考図】
【掲載論文情報】
タイトル:TALEN-mediated depletion of the mitochondrial gene orf312 proves that it is a Tadukan-type cytoplasmic male sterility- causative gene in rice
著者:Takatsuka A, Kazama T, Arimura S, Toriyama K
雑誌名:The Plant Journal 110: 994-1004
DOI: 10.1111/tpj.15715
【問い合わせ先】
鳥山欽哉
東北大学大学院農学研究科環境適応植物工学分野 教授
e-mail: torikin*tohoku.ac.jp *を@に変更してください。
この研究は以下のSDGsの達成に資するものです。
- 3. すべての人に健康と福祉を
- 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう