プラスチドのオートファジーに関する成果が国際学術誌PCPの表紙を飾る

植物栄養生理学分野の石田 宏幸准教授らは、プラスチド(色素体)のオートファジーの過程で生じる特異小胞「プラスチドボディー」が異常蓄積する変異体gfs9-5を順遺伝学的手法により単離し、その成果を国際学術誌Plant & Cell Physiology(インパクトファクター = 4.927)で発表しました。この度、関連する研究成果の画像が、本論文の掲載される2021年9月号の表紙に選定されました。

植物は窒素などの大切な必須栄養素を体内でリサイクルしながら成長します。植物特有のオルガネラであるプラスチド(色素体)には多くのタンパク質が含まれており、それらは個体の発達過程や環境応答時にオートファジーにより分解され栄養源としてリサイクルされます。オートファジーは真核生物が細胞成分を液胞/リソソームに輸送して分解する機構です。プラスチドオートファジーには、オルガネラの一部が本体から切り離されてプラスチドボディーを形成しながら進行する部分分解の経路が存在しますが、そのメカニズムはまだよく分かっていません。gfs9-5変異体は、これまで達成が困難であったプラスチドボディー形成の直接観察を可能にすることから、プラスチドオートファジーのメカニズムを明らかにしていくための有用な遺伝学的ツールになると考えられます。

本論文は、植物栄養生理学分野(石田准教授、大学院生の岡下 悠さん、牧野 周名誉教授)と、長浜バイオ大学(林 誠教授)、理化学研究所(泉 正範博士)および米国コーネル大学(石田ひろみさん、Nazmul H. Bhuiyan博士、Klaas J. van Wijk教授)との国際共同研究による成果です。

【発表論文】
雑誌名: Plant & Cell Physiology, 62(9): 1372-1386 (2021), doi: 10.1093/pcp/pcab084
論文名:GFS9 affects piecemeal autophagy of plastids in young seedlings of Arabidopsis thaliana.
著者名:Hiroyuki Ishida, Yu Okashita, Hiromi Ishida, Makoto Hayashi, Masanori Izumi, Amane Makino, Nazmul H. Bhuiyan, Klaas J. van Wijk
掲載号URL:https://academic.oup.com/pcp/issue/62/9

【表紙紹介】
日本植物生理学会:PCPギャラリー
URL: https://jspp.org/pcp/photo_gallery/

 

この研究は、植物体内での窒素リサイクルの機構を明らかにし、少ない肥料でもよく育つ作物の開発を目指しており、以下のSDGsの達成に貢献しうるものです。

  • 2.飢餓をゼロに
  • 15.陸の豊かさも守ろう