腸内微生物叢改善による子牛の難治性下痢症の改善 ~糞便移植の有効性を裏付ける科学的メカニズムを探索~

子牛の下痢症がもたらす経済損失は年間10億円と甚大であり、その治療としては抗菌薬が多用されているのが現状です。しかし、家畜生産現場から生まれる薬剤耐性菌が世界レベルの問題として取り上げられており、抗菌薬のみに依存しない、新たな疾病制御技術の確立が急務とされています。

東北大学大学院農学研究科 食と農免疫国際教育研究センターのIslam Jahidul特任助教、野地智法教授および、千葉県農業共済組合 北部家畜診療所の田中秀和副所長らの研究グループは、糞便移植による子牛の下痢症制御を可能にするための研究基盤を構築しました。

腸内に生息する微生物は、個体の健全性を保つ上で重要な役割を有していることが、近年の研究から次々と明らかにされています。今回、難治性に至った下痢症を発症するレシピエント牛に対し、健常ドナー牛より採取した糞便を移植することで、その症状を劇的に緩和させることが可能であることを実証しました(図1参照)。加えて、子牛の下痢症制御を目的とした糞便移植が効果的である理由を、ドナーとレシピエントの糞便を用いた細菌叢解析※2(メタゲノム解析)および代謝物解析※3(メタボローム解析)により解明し、有効性に関わる細菌および代謝物を探索することに成功しました。

本研究成果は、2022年2月21日午前1時(英国時間)に英国BioMed Central (BMC)社が発行する科学誌Microbiomeに掲載されました。

>>プレスリリース(東北大学ホームページ)