研究ハイライト&トピックス

2019/07/08

世界初の植物ミトコンドリアのゲノム編集に成功
〜F1育種において重要な細胞質雄性不稔性の原因遺伝子を特定〜

植物細胞には,核,葉緑体,ミトコンドリアにそれぞれにゲノム(遺伝情報)が存在しています. 植物ミトコンドリアのゲノムには,細胞呼吸に関わる遺伝子群や,これらの遺伝子発現に必要な遺伝子群,また細胞質雄性不稔性(注1)の形質を担う遺伝子などが存在しています.しかしながら,ミトコンドリアゲノムでは,これまで標的を絞った人為改変が不可能であったため,遺伝子の詳細な解析に手がつけられない状態が続いておりました.

本研究科の風間智彦助教のグループは,玉川大学農学部の肥塚信也教授,東京大学大学院農学生命研究科の有村慎一准教授らの研究グループおよび東京工業大学生命理工学院,国立遺伝学研究所と共同で,ゲノム編集技術TALEN(注2)を用いて,世界で初めて植物(イネとナタネ)ミトコンドリアゲノムの編集に成功しました.研究グループは,野菜や穀物のF1ハイブリッド(注3)種子生産の場で広く利用されている細胞質雄性不稔性の形質を担うミトコンドリア遺伝子をゲノム編集によってノックアウトすることで,花粉の機能が回復して,種子が稔ることを証明しました.さらに,ゲノム編集を受けたミトコンドリアゲノムは,その修復過程でゲノム構造を大きく変化させながらも,他の遺伝子の機能が変わらず維持されていることも明らかになりました.

今回の研究成果によって,これまで解析が困難であった植物ミトコンドリアゲノムの直接的な変異導入による解析が可能となり,今後の基礎科学的な新知見への貢献と,農業生産分野や新品種育成等での応用展開が期待されます.
本研究成果は,国際誌Nature Plantsに掲載されました.

(注1)細胞質雄性不稔性:核ゲノムの遺伝子ではなく,細胞質ゲノム(ミトコンドリアゲノム)に原因をもつ雄性不稔のこと.機能ある花粉が生産されない.

(注2)TALEN(Transcription Activator-Like Effector Nuclease):DNAの任意の塩基配列を認識して切断することができる人工制限酵素.

(注3)F1ハイブリッド:雑種強勢(遠縁の2系統を交雑した第一代は両親系統を凌ぐ生育をみせる現象)を利用した育種・農業生産方法のこと.

雑誌名:「Nature Plants」(7月8日)

論文タイトル:Curing cytoplasmic male sterility via TALEN-mediated mitochondrial genome editing.
DOI 番号:10.1038/s41477-019-0459-z
https://www.nature.com/articles/s41477-019-0459-z

著者:T. Kazama*, M. Okuno, Y. Watari, S. Yanase, C. Koizuka, Y. Tsuruta, H. Sugaya, A. Toyoda, T. Itoh, N. Tsutsumi, K. Toriyama, N. Koizuka*, S. Arimura* (* Corresponding authors)

ページの上部へ戻る