研究ハイライト&トピックス

2020/06/08

テラヘルツ光照射による細胞内タンパク質重合体の断片化
-THz パルス光が衝撃波として生体内部へ到達する可能性を発見-

理化学研究所(理研)光量子工学研究センターテラヘルツイメージング研究チームの山崎祥他基礎科学特別研究員、保科宏道上級研究員、大谷知行チームリーダー、東北大学大学院農学研究科の原田昌彦教授、量子科学技術研究開発機構の坪内雅明上席研究員、大阪大学産業科学研究所の磯山悟朗特任教授、京都大学大 学院農学研究科の小川雄一准教授らの共同研究グループは、水溶液中で培養した細胞にテラヘルツ(THz)[1]パルス光を照射した際、その光エネルギーが水溶液中を「衝撃波[2]」として伝搬し、細胞内のタンパク質重合体を断片化することを明らかにしました。
本研究成果は、THz パルス光が生体内の水に吸収されて衝撃波を生み出し、生体内部の細胞や組織に作用する可能性を示しており、今後の安全指針策定や、THz光を用いた新しい細胞操作技術の創出につながると期待できます。
今回、共同研究グループは、大阪大学産業科学研究所の自由電子レーザー[3]によって発生した THz パルス光(周波数 4 THz、80~250μJ/cm2)を、水溶液中の培養細胞に向けて照射したところ、細胞内に存在するタンパク質重合体(アクチン[4]繊維)が切断され、断片化することを発見しました。この断片化は、THz 光 が到達できない水深数mmで観察されたことから、THz 光がタンパク質重合体に直接作用したのではなく、水表面で吸収された光エネルギーが衝撃波として水溶液中を伝搬し、細胞内のタンパク質重合体構造の変化を誘起したと考えられます。
本研究は、科学雑誌『 Scientific Reports 』オンライン版(6月2日付)に掲載されました。



水溶液表面で吸収されたTHzパルス光が衝撃波を発生させ、細胞内のタンパク質重合体(アクチン繊維)を断片化する

論文情報
<タイトル>
Propagation of THz irradiation energy through aqueous layers: Demolition of actin filaments in living cells
<著者名>
Shota Yamazaki, Masahiko Harata,Yuya Ueno, Masaaki Tsubouchi, Keiji Konagaya, Yuichi Ogawa, Goro Isoyama, Chiko Otani and Hiromichi Hoshina
<雑誌>
Scientific Reports
<DOI>
10.1038/s41598-020-65955-5

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