当研究室では、麹菌 Aspergillus oryzae と出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae を主な研究対象としています。麹菌はアミラーゼを代表とする有用な加水分解酵素を菌体外に多量に分泌生産する特徴を有しており、日本酒・味噌・醤油などの製造に用いられています。私たちは、麹菌の加水分解酵素遺伝子の発現制御機構を明らかにするため、転写因子やその活性化に関わる関連因子の解析を中心に研究を進めています。また、近年では麹菌の安全性・タンパク質高生産能力が注目され、異種の有用物質(タンパク質、二次代謝産物)生産の宿主としての利用が期待されています。当研究室では、遺伝子工学的手法により麹菌で有用物質を高生産させることを目指した研究も行っています。
また、出芽酵母は真核生物のモデル生物として広く用いられており、当研究室では出芽酵母を利用して、小胞体関連分解、環境変化に応答した膜タンパク質分解、オートファジーなど、真核生物におけるタンパク質分解の詳細な分子機構を明らかにするための研究も進めています。
現在は以下の研究テーマを中心として研究・教育を行っています。
・麹菌による有用物質生産制御システムの開発
・麹菌の産業上有用な転写因子の機能解析
・真核微生物を用いた異種タンパク質の分泌生産
・真核微生物における細胞膜輸送体の環境変化に伴う分解機構
・出芽酵母を用いたオートファジー機構の解析
・二次代謝産物生産に適した糸状菌遺伝子発現システムの開発
・木質系バイオマスの分解とエタノール生産に適した麹菌と酵母の育種
・麹菌における選択的転写開始機構の解析
・麹菌の分子生物学的解析用ツールの開発
以下では個別の研究テーマの一部についてその概略を紹介します。より詳しい内容を知りたい場合は教員までご連絡ください。
(文責:田中瑞己)