出芽酵母を用いたオートファジー機構の解析
出芽酵母を用いたオートファジー機構の解析
細胞は栄養飢餓条件に陥ると、細胞質成分をリソソーム・液抱に直接運んで分解します。オートファジーと呼ばれるこの機構は、細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしています。私たちは出芽酵母を用いてオートファジーの詳細な分子機構を明らかとすることを目指しています。
1. 新規 Cvt 経路輸送基質の同定
出芽酵母には、オートファジー機構を利用して液抱加水分解を液抱に輸送する機構が存在し、 Cytoplasm-to-vacuole targeting (Cvt) 経路と呼ばれています。オートファージが大規模な細胞質成分の分解機構であるのに対して、Cvt 経路は液胞の構築(バイオジェネシス)を担っており、栄養増殖時にも機能しています。Cvt 経路の輸送基質としては、α-マンノシダーゼ (Ams1) とアスパラチルアミノペプチダーゼ (Ape1) が知られています。私たちは、新たに、Ape4 と命名したアスパラチルアミノペプチダーゼについて生化学的、細胞生物学的、遺伝学的、分子生物学的解析を行い、以下のことを明らかとしました。
・Ape4 は液胞にも局在し、その局在にオートファジーが必要である。
・Cvt 経路のレセプター Atg19 が Ape4 の選択的輸送に関わる。
・Ape4 へ液胞でも安定に存在し機能しうる。
以上の結果から、 Ape4 が Cvt 経路の新規輸送基質であることが示されました。さらに、Atg19 分子内の輸送基質 (Ape1, Ams1, Ape4) 結合部位がそれぞれ異なっていること、Ape1 欠損株では Ape4 の効率的な輸送が阻害されることなどを明らかとし、Ape4 が Ams1 と同様に Ape1 輸送システムを利用していることを示しました。
参考文献
Autophagy in health and disease: a double-edged sword.
Science (2004) 306, 990-995.
Takahiro Shintani and Daniel J. Klionsky.
Aspartyl aminopeptidase is imported from the cytoplasm to the vacuole by selective autophagy in Saccharomyces cerevisiae.
Journal of Biological Chemistry, 2011, 286(15): 13704-13.
Masaki Yuga, Katsuya Gomi, Daniel J. Klionsky, and Takahiro Shintani.
2.リン酸飢餓によるオートファジーの誘導
オートファジーは主に窒素源飢餓により誘導されますが、炭素源飢餓などによっても誘導されることが知られています。私たちは、オートファジーがリン酸飢餓によっても誘導されることを明らかにしました。リン酸飢餓時のオートファジーは、窒素源飢餓時と同様に TORC1 シグナル経路によって制御されているものの、窒素源飢餓と比較すると非常にゆっくりと誘導されることが明らかになりました。また、リン酸飢餓時のオートファジーには、選択的オートファジーに関わる Atg11 が必要であることを明らかにしました。
参考文献
Induction of autophagy by phosphate starvation in an Atg11-dependent manner in Saccharomyces cerevisiae.
Biochemical and Biophysical Research Communications, In press.
Hiroto Yokota, Katsuya Gomi, and Takahiro Shintani.
2017年1月6日金曜日