植物ホルモン類(アブシジン酸・ジャスモン酸)に関する研究

「植物ホルモン類の構造活性相関」
植物ホルモン類の構造活性相関を明らかにするため、また天然型より強い活性の化合物を創製するため、様々なアナログを合成、活性試験をおこないました。

[1]ジャスモン酸メチル
ジャスモン酸メチルは、はじめジャスミン花の香気成分として単離・構造決定されました。しかしその後、アブシジン酸様の植物成長抑制作用を示すことが明らかになりました。そして最近では、植物の傷害刺激の伝達物質であることも示唆され、注目を浴びている化合物です。
(1)ジャスモン酸メチル()の示す活性の本体はその異性体であるエピジャスモン酸メチル()であることが明らかになりつつあります。しかし、はいとも簡単にに変化してしまい、活性の比較が困難です。このあたりのことを明らかにし、また、天然物より高活性な化合物を創造するため、異性化を妨げるようなアナログ(など)を設計、合成しました。

ジャスモン酸構造式

15. "Synthesis and Biological Activities of 3,7-and 4,5-Didehydrojasmonates"
  H. Kiyota, Y. Yoneta and T. Oritani, Phytochemistry, 46, 983-986 (1997).

(2)ジャガイモの塊茎形成の引き金となる情報伝達物質として末端-OH化ジャスモン酸メチル(ツベロン酸メチル)が単離されました。ところが、のみならずジャスモン酸メチル自体にも塊茎形成活性がみられたため、末端OH基の必要性が論じられていました。私はこの問題に解決を与えるため、末端をトリフルオロ化したアナログ()を設計しました。フッ素の原子半径は水素に近いため、生体にとって疑似効果がみこまれますが、C-F結合は生体内で開裂しないという性質があります。結果はにも同等の活性がみられたため、末端OH基は活性発現に必須ではなく、生体内輸送(グルコシドとして)のために必要なのだと結論できました。

ジャスモン酸構造式

10. "Synthesis and Potato Tuber-Inducing Activity of Methyl 5',5',5'-Trifluorojasmonate"
  H. Kiyota, M. Saitoh, T. Oritani and T. Yoshihara, Phytochemistry, 42, 1259-1262 (1996).

39. "(±)-Methyl 11-Fluorojasmonate as a Designed Antimetabolite of Methyl Jasmonate: Synthesis and Plant Growth Regulatory Activity"
  H. Kiyota, T. Koike, E. Higashi, Y. Satoh and T. Oritani, J. Pesticide Sci., 26, 96-99.

(3)ツベロン酸メチル()のラセミ体合成を達成いたしました。 合成経路
23. "Synthesis of Methyl Tuberonate, a Potato Tuber-forming Substance"
  H. Kiyota, D. Nakashima, T. Oritani, Biosci. Biotech. Biochem., 63 (12), 2110-2117 (1999).

(4)ジャスモン酸メチルはラセミ体として工業生産されていますが、その効率よい光学分割法を酵素触媒を用いて達成いたしました。   

Me-JA分割

  
Me-JA分割2

41. "Lipase-catalyzed preparation of both enantiomers of methyl jasmonate"
  H. Kiyota, E. Higashi, T. Koike, T. Oritani, Tetrahedron: Asymmetry, 12, 1035-1038 (2001).

129. "Enzymatic Resolution of (±)-2-Exo-7-syn-7-(1-propynyl)norbornan-2-ol, a Key Synthetic Intermediate for Jasmonoids"
  Hiromasa Kiyota, Daisuke Nakashima, Shigefumi Kuwahara, Takayuki Oritani, Zeitschrift fuer Narurforshung, 63b (12), 1441-1442 (2008).

[2]アブシジン酸
(1)植物ホルモンとして名高いアブシジン酸には、側鎖cis二重結合が容易に光異性化して不活性化する、という欠点があります。この問題を解決するため、さまざまな置換基を導入したアナログを設計、合成しました。

アブシジン酸構造式

70. "Synthesis and Biological Evaluation of Abscisic Acid, Jasmonic Acid and their Analogs" [REVIEW]
T. Oritani, H. Kiyota, S. Kuwahara"New Discoveries in Agrochmicals", ACS Symposium Series, Vol. 892, pp. 246-254 (2005).

59. "Biosynthesis and Metabolism of Abscisic Acid and Related Compounds" [REVIEW]
T. Oritani, H. Kiyota, Nat. Prod. Rep., 20(4), 414-425 (2003).

11. "2-Fluoro and 2-Methoxycarbonyl Epoxy-β-ionylideneacetic Acids as Abscisic Acid Analogs"
  H. Kiyota, T. Masuda, J. Chiba and T. Oritani, Biosci. Biotech. Biochem., 60(7), 1076-1080 (1996).

(2)アブシジン酸は高価なため、植物ホルモンの中では唯一実用化されておりません。アブシジン酸を安価で効率的に供給するため、重要合成中間体であるフォレノールの酵素触媒による光学分割の検討を行いました。相当するクロロ酢酸エステルの不斉加水分解反応では、エステラーゼ SNSM-87 (Klebsiella oxytoca, Nagase) を用いると (S)-エステルが、リパーゼ P (Pseudomonas cepacia, Amano) を用いると (R)-エステルが蓄積し、各々加水分解することで (S)- および (R)-フォレノール を調製しました。また、アブシジン酸アナログであるエポキシ−β−イオニリデン酢酸の合成中間体の分割も行いました。

フォレノール分割

エポキシ体分割

22. "Hydrolase-Catalyzed Preparation of (R)- and (S)-4-Hydroxy-2,6,6-trimethyl-2-cyclohexen-1-ones (Phorenols), the Key Synthetic Intermediates for Abscisic Acid"
  H. Kiyota, M. Nakabayashi and T. Oritani, Tetrahedron: Asymmetry, 10 (19), 3811-3818 (1999).

26. "Enzymatic Resolution of (+-)-Epoxy-beta-cyclogeraniol, a Synthetic Precursor for Abscisic Acid Analogs"
  R. Okazaki, H. Kiyota and T. Oritani, Biosci. Biotech. Biochem., 64 (7), 1444-1447 (2000).

"光学活性4-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オンの製造方法"
  清田洋正、中林美穂、折谷隆之、公開特許公報、平成13年1月30日、25395.

"光学活性4-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オンの製造法"
  清田洋正、中林美穂、折谷隆之 公開特許公報 平成13年1月30日、25396.

"光学活性1,2-エポキシ-2,6,6-トリメチルシクロヘキサンメタノールの製造方法"
  清田洋正、岡崎亮、折谷隆之、公開特許公報、平成13年8月21日、224396.

"光学活性1,2-エポキシ-2,6,6-トリメチルシクロヘキサンメタノールの製造法"<BR>   清田洋正、岡崎亮、折谷隆之、公開特許公報、平成13年8月21日、226363.

"光学活性1,2-エポキシ-2,6,6-トリメチルシクロヘキサンメタノールの製造方法"
  清田洋正、岡崎亮、折谷隆之、PCT、平成13年2月8日、JP01、00882.