園芸学会平成10年度春季大会の報告

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 本年度の園芸学会春季大会は, 4月 2日に,新宿京王プラザホテルにおいて園芸学会創立75周年記念式典・講演会・祝賀会が行われ, 4月 3日と 4日に,東京農工大学においてポスター発表とシンポジウムが行われました.
 今回の学会は創立75周年を記念して,海外から講演者を招待し,また,研究発表は全て英文ポスターの形式で行われるなど,半国際学会的な雰囲気でした.
 ポスター発表の課題数は,果樹100件,野菜94件,花卉70件,利用40件でした.本研究室では助教授の金山が講演を行い,李,西山,菊池,清野がポスター発表をしました.ここでは,ポスター発表の一部と,シンポジウムの一部について紹介します.


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園芸学会創立75周年記念講演会


1.Fruit and vegetable quality in the 21st century---the influence of Japan

John V. Possingham 氏(国際園芸学会理事)

園芸におけるバイオテクノロジーの応用(耐病性,無核果 etc.)について.

2.日本の園芸生産

梶井 功 氏(東京農工大学長)

日本の園芸の動向について,停滞の原因とその解決法について.

ポスター発表


1.Effects of photoperiod and seed tuber weight on the development of spikes and new tuber in Chinese yam (Dioscorea Opposita Thunb. cv. Ichoimo) plants.
Yoshida, Y1., H. Takahashi1, H. Kanda1 and K. Kanahama2 (1Akita Pre. Coll. Agr., 2Fac. Agri. Tohoku Univ.)

 イチョウイモの花序と新芋の発達に及ぼす種芋重と日長の影響を調査した.25g以上の種芋では8時間日長でも24時間日長でも花序が形成され,種芋が大きいほど開花株率が高かった.第1花序着花節位は8時間日長で低かったが,花序の総数は24時間日長で多かった.日長間差は種芋が大きいほど大きかった.



2.Vascular system in tomato main stem, sympodium and inflorescence
Li, T. L.1, T. Seino2 and K. kanahama2 (1Fac. Agr. Shenyang Agr. Univ., 2Fac. Agri. Tohoku Univ.)

 トマトの主茎,仮軸,花序の維管束走向について調査した.主茎には8本の維管束が存在し,各節間において8本のうち2本がくっついたり離れたりしていた.主茎から仮軸に走向する4本の維管束は仮軸内で8本に分かれた.第一花序では,第7葉か第8葉から4本の維管束が走向していた.同様の構造が上位の花序でも認められた.



3.Characterization of a tomato floral homeotic mutant, LEAFY INFLORESCENCE
Seino, T., N. Takanashi, Y. kanayama and K.Kanahama (Fac. Agri. Tohoku Univ.)

 葉化花房トマト(研究紹介のページ参照)の形態について,果実様体の形成に及ぼす環境の影響について調べたところ,温度は30/25℃より24/19℃で,日長は8時間より24時間の長日で,形成され易いことが示された.今後は,普通のトマトと葉化花房トマトの MADS box 遺伝子の発現の違いについて調査する予定である.



4.Effect of photoperiod on the inflorescence development of everbearing strawberry plants grown under high temperature
Nishiyama, M and K.Kanahama (Fac. Agri. Tohoku Univ.)

 四季成り性イチゴ‘サマーベリー’を様々な環境条件下で生育したところ,30/25℃という高温条件下で花房の発生が日長に著しく影響された.そこで,30/25℃における花房の発達に及ぼす日長の影響について調査したところ,13時間日長と14時間日長の間に花房発達の限界日長が存在することが示めされた.



5.Effect of photoperiod and temperature on flowering of Delphinium
Kikuchi, K., Y. Wakamoto and K.kanahama (Fac. Agri. Tohoku. Univ.)

 デルフィニウムは,17/12℃の低温では20時間以上の日長で,24/19℃の中温では16時間以上の日長で全ての株が抽だいした.抽だいに及ぼす日長の影響は,24/19℃より17/12℃ではっきりと現れた.また,20時間以上の日長では低温でも良質の花序が出来た.



シンポジウム

下記の内容について詳しいことを知りたい方は,上の「シンポジウム」をクリックして下さい.


1.Biochemistry of short-day and long-day flowering in Pharbitis nil
Shinozaki, M., E. Ueno, M. Fujinami and K.Kasuya (Kyoto Univ.)

 アサガオは短日性であるが,低温,貧栄養,強光条件下では,連続照明下でも花成誘導することが出来る.花成誘導される条件下におかれた子葉からの抽出物を分析したところ,花成に関わる物質を同定できた.



2.Ecotopic expression of the homeobox gene disturbs the developmental program
Kano-Murakami, Y. (Natl. Inst. Fruit Tree Sci.)

 コメから単離したOSH1という遺伝子を導入されたアラビドプシス,キウイフルーツ,タバコの形態が変化した.また,変化の要因としてOSH1が過剰に発現した植物体ではジベレリンの生合成量が著しく減少していることわかった.



3.Environmental and mechanical effects on stem elongation
Erwin, J. E. (University of Minnesota)

 草丈の伸長に及ぼす環境の影響としてDIFと光の質について,機械的影響として接触刺激について,また,内的要因としてジベレリンが影響することを講演した.


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