研究紹介

(1)魚骨脆弱化

 子供や若い女性を中心に魚離れが進んでいると言われますが、その理由として魚骨の存在があります。平成20年度の水産白書内「本当に子どもは魚を好まないのか」に、

  • 「子どもが魚を好まない」といわれますが、子どもはすべての魚が嫌いなのではありません。例えば、寿司は子どもにも大変人気があります
  • (社)大日本水産会が行った調査においても、魚が嫌いな理由として挙げられたのは「骨があるから」、「食べるのが面倒」、「食べるのに時間がかかる」、「においが嫌い」などです。
  • また、嫌いな魚の上位にはサバ、サンマ、アジ、イワシなど鮮度が落ちやすく小骨が多い魚が挙げられています。

 の記載があります。また、農林水産省ホームページ「こんなに変わっています日本の食生活」でも、小学生・中学生、いずれも「好きな食べ物」の1位は「寿司」となっています。さらに、「日本人の味覚と嗜好」にも、好きな主食の2位ににぎり寿司、好きなおかず1位に刺身が挙げられています。これらの事より、決して魚自体に人気がないわけではなく、魚の骨を除去せずそのまま食べられるようになれば、広い年齢層への魚の消費が期待できます。

 本研究室では、魚骨に対しある周波数の電磁波を照射すると脆弱化する、という事を確認しています。現在、サバ、サンマ等の小骨の目立つ魚を使用し、魚の骨全体を均一に脆弱化する電磁波の照射条件について検討を進めています。

骨脆弱化グラフ
(レオメーターによる魚骨脆弱化効果)
レオメーター
(写真:骨の脆弱化効果を測定する機械「レオメーター」)

(2)迅速均一解凍

 現在利用されている解凍方法は、自然解凍、流水解凍、電子レンジ解凍等、多くの方法があります。しかし、これらは冷凍食材の種類により、解凍に時間がかかる、品質(色・味・におい)が劣化する、ドリップが多量に発生する、危害物質が発生する等の問題があり、より優れた解凍方法の開発が求められています。

 本研究室が開発した電磁波解凍法は、過剰加熱やドリップの発生を抑えつつ、様々な冷凍食材を迅速・均一に解凍する事ができます。現在は、解凍のための所要時間をより短縮しつつ、安定した解凍を行う条件について検討を進めています。

寿司の解凍2
(写真:マグロ赤身寿司 解凍前→解凍後)
マグロはやや冷たく、シャリはほのかに温かい、理想的な状態で解凍できる
ウニの解凍
(写真:ウニの解凍後変化)
電磁波解凍したウニは、その後長時間冷蔵保管してもトロケが少ない
クジラの電磁波解凍
(写真:クジラの冷蔵庫解凍・電磁波解凍の比較)
電磁波解凍したクジラは、ドリップが発生しない状態で短時間に解凍できる

(3)マイルド殺菌

 殺菌は食品加工に際して非常に重要な技術ですが、缶詰・レトルト等の高温・高圧を加える殺菌方法は品質・風味の劣化が見られます。品質、風味を保ちつつ殺菌する方法が求められています。

 本研究室では、ある周波数の電磁波を照射すると、電磁波により物体にかかる熱以上の殺菌効果が見られる(マイルド殺菌)事を確認しています。現在、様々な食材について殺菌効果を検証すると共に、殺菌効果の大きい保存容器についても検討を進めています。