研究室の概要

 植物遺伝育種学分野は、イネとアブラナ科植物を主材料として、受粉受精過程に関与する遺伝子を解析して、植物生殖の分子機構に関する研究を行うとともに、遺伝子のDNA変異解析による新規育種技術の開発を目指しています。主たる研究課題は1)植物生殖機構の分子遺伝学的研究、2)イネとアブラナ科作物の環境ストレス耐性の遺伝に関する研究、3)アブラナ科作物のゲノムと育種技術に関する研究の4つです。研究以外に、世界的に希少価値の高いアブラナ近縁植物遺伝資源の保存と配布の事業も行っております。

 なお我々の研究室が保存するアブラナ科野生種の系統は世界的に有名です。
"Tohoku Univ. Brassica Seed Bank"

  1. 自家不和合性や雄性不稔性の分子遺伝学的研究

  2. イネ品種間の遺伝子DNA変異の解析

  3. イネの環境ストレス耐性遺伝子に関する研究

  4. アブラナ科植物のゲノムと遺伝資源に関する研究など

当研究室で行っているアブラナ科植物の研究について

当研究室で行っているイネの研究について

最近の研究成果の概要

  1. ダイコンゲノムの変異解析(Shirasawa and Kitashiba 投稿中; Ishidaら2015; Kakizakiら投稿中; 長谷山ら2016)
    RADseq法により4,435マーカーからなる超高密度連鎖地図を作成した。さらに、ダイコン118系統のゲノムの約37,000箇所の塩基配列変異を解析した。この変異情報に基づき分子系統樹解析をしたところ、118系統は遺伝的に大きく8つのグループに分類された。形態特性や耐塩性のアソーシエーション解析を行ったところ、***。ダイコンのグルコシノレートは、4MTB-GSLが大部分を占めるが、4MTB-GSLの代わりにグルコエルシンが多い突然変異体を見出した。その原因遺伝子を同定し、グルコエルシンから4MTB-GSLに変える酵素をコードしている遺伝子であることを明らかにした。ダイコンの多数のSハプロタイプの塩基配列を決定し、世界的に混乱しているSハプロタイプ名の統合を可能とした。

  2. 自家不和合性自己認識分子の機能解析(山本ら2016; 宮腰ら2016)
    Arabidopsis lyrataのSCR(花粉側自己認識遺伝子)とSRK(柱頭側自己認識遺伝子)を導入して自家不和合性にしたシロイヌナズナを用い、エンドサイトーシスに関与する遺伝子AP2Mの突然変異体をCRISPR/Cas9で作成した。機能欠損型突然変異体の自家不和合性は正常であったことから、SRKの活性化にはエンドサイトーシスは重要ではなく、SRK活性化が細胞膜で起こっていることを示すことができた。

  3. イネの耐冷性に関わる量的遺伝子座の同定(Ulziibatら2016; Endoら2016)
    穂ばらみ期の耐冷性が極強の「ひとめぼれ」の耐冷性をさらに強化するため、中国品種「麗江新団黒谷」やブータン品種「Kuchum」の耐冷性が戻し交雑育種で導入されているが、これら遺伝資源の耐冷性遺伝子座をSNPやSSRなどのDNAマーカーを用いて絞り込み、「麗江新団黒谷」の耐冷性遺伝子は、第3染色体の長腕末端近くの35 kb領域に、「Kuchum」の耐冷性遺伝子は、第4染色体の1.4 Mb領域にあることを明らかにした。「麗江新団黒谷」の35 kb領域にある6つの遺伝子と耐冷性との明確な関連は見出せなかった。

  4. セイヨウナタネの耐塩性と形質転換効率の遺伝分析(Yongら2015; 真壁ら2016; 斎藤ら2016)
    85品種を用いて15,166遺伝子座の変異解析を行い、無処理区に対する塩処理区の生育程度の比と地上部のNaイオン濃度を測定し、ゲノムワイドアソーシエーション解析を行った。A1、A2、A3、A5、A7、C3、C9染色体にQTLを検出し、A1染色体のQTL中のBnaaTSN1は、耐塩性品種が正常な遺伝子、耐塩性弱品種が機能欠損型対立遺伝子を持つことを見出した。地上部Na濃度も品種間差が大きく、6つのQTLを検出した。最もアソシエーションが高い遺伝子座はC7染色体に検出され、その近傍にはLEA遺伝子が座乗し、高Na蓄積品種と低Na蓄積品種間でエキソン領域に非同義的置換が見出された。アグロバクテリウムによる遺伝子導入効率に大きな品種間差があることを見出し、同様の解析で、A1に形質転換効率に関わるQTLがあることを明らかにした。

  5. ハクサイの小胞子培養の効率に関わる遺伝子座の同定(Kitashibaら2016)
    小胞子培養効率が高い品種と低い品種の自殖系統間のF1個体を用いて小胞子培養を行い、得られた胚様体の遺伝子型を154のDNAマーカーについて分析し、分離比が高品種側に大きく偏っている染色体領域をA5、A8、A9に見出した。その中で、A8のBr071-5cマーカーの位置は、BC3F1集団の遺伝子型間で小胞子培養効率に最も大きな差が検出され、このマーカー近傍に培養効率に関わる遺伝子があると推察された。

  6. 一塩基多型の高感度検出技術の開発(北柴ら2016)
    ストレプトアビジン被覆磁気ビーズを用いて1/1,000濃度で含まれる変異型SNPを検出する高感度分析法を開発した。また、CRISPR/Cas9で野生型遺伝子を特異的に切断し、変異型SNPを検出する技術も開発した。これらは、逆遺伝学的突然変異体選抜への利用が期待できる。





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