Banner Image Japanese Top Page English Top Page

« 東日本大震災:仙台市南東部における津波被災農地の視察 | トップページ | 日本土壌肥料学会 2011年度東北支部会 »


「包括的土壌分類 第一次試案」が出版されました

niaes29_coverpage日本は国土全体の土壌を一つの分類体系でカバーできていない,先進国のうちでは希な国です.農耕地,林野など,事業単位毎の土壌分類がずっと行われてきたためです.そのため,国全体の統一的な土壌資源目録・土壌図がない状態でした.統一分類とそれを基にした土壌図作成のための検討が続けられ,日本ペドロジー学会は2003年に「日本の統一的土壌分類体系 - 第二次試案(2002) -」をまとめました.しかし,この試案も実用のためには十分とは言えませんでした.このたび,農業環境技術研究所は,2003年のペドロジー学会の試案と,データの蓄積のある従来の農耕地土壌分類を融合させて,「包括的土壌分類 第1次試案」を公表しました.印刷物やPDFによって誰でも入手可能です.

私たちの研究室でも,今後はこの分類試案を大いに活用しようと思っています.私たちは火山放出物を母材とする土壌(主に,黒ボク土)をずっと扱ってきました.日本の森林には林野土壌の分類による「褐色森林土」が国土の5割以上も分布していますが,この中には物理的・化学的に黒ボク土と同じ性質を示す土壌が相当の割合であるのではないかと推定されます.このような土壌は新しい分類試案では「黒ボク土」になります.私たちは今,この「黒くない黒ボク土」が東北地方のどのような場所にどのくらいあるのかを検討中です.

日本中の土壌研究者がこの分類試案を利用し,改良のための意見を寄せ合い,5年後くらいに「日本土壌分類 2015年版」がでると良いなと思っています.その時には,もう「包括的」も「試案」も取れていますように.

高橋 正 2011-04-21

Banner Image