研究科長・学部長挨拶
青葉山新キャンパスにおける発展
「食料」「健康」「環境」を課題とする生物産業科学の融合研究教育の推進
東北大学農学研究科・農学部では、東北大学の建学の理念「研究第一(Research First)」「門戸開放(Open Door)」「実学尊重(Practice-oriented Research)」に基づき、人類が生きていくための「食料(Food)」「健康(Health)」「環境(Environment)」を課題に取り組む生物の産業科学に関する教育と研究を行なっています。農学は、自然との共生をはかり、人類の生存にとって必須の食を含む多様な生物マテリアルの生産およびその修飾や変換を探求する学問です。地球規模で様々な課題が山積する今日、農学が日本と世界に果たすべき役割は極めて大きくなっています。
農学が抱える社会的課題は、国内では人口減少と少子高齢化に伴い農業従事者の減少や高齢化が進行し弱体化しつつある農林水産業・食品バイオテクノロジー産業の成長戦略から食料の安定供給体制を構築することです。世界では、やがて迎える100億人の人類生存のための食料生産確保と100歳まで健康で元気に生きられる社会の実現が求められており、それを支える地球規模での環境保全・自然共生があげられます。さらに、人類の開発活動激化による地球温暖化とそれに伴う環境変化や自然災害への対応も農学に直結し解決すべき重要な課題です。これらの課題解決に向け、農学研究科・農学部では、「食料」・「健康」・「環境」に関わる高度な基盤研究を推進し、「生物で新たな産業を創成する」ための応用開発研究を展開し、生物産業科学に関する国際的な学術研究拠点の形成を進めています。
大学院構成は、2022年度より、農林水産業分野の「生物生産科学専攻」とバイオテクノロジー分野の「農芸化学専攻」の2専攻を柱とする新たな大学院組織に再編し、「生物生産科学専攻」に4講座(植物生命科学講座、動物生命科学講座、水圏応用科学講座、農業経済学講座)を、「農芸化学専攻」に2講座(生物化学講座、食品天然物化学講座)をそれぞれ配置しています。学部構成は、「生物生産科学科」と「応用生物化学科」の2学科に「植物生命科学コース」「農業経済学コース」「動物生命科学コース」「海洋生物科学コース」「生物化学コース」「生命化学コース」の6コースを配置しています。また当研究科には附属の4センターが設置されております。川渡と女川をフィールド拠点とする「複合生態フィールド教育研究センター」には、日本の国立大学としては最大規模の実験農場(東北大学の全敷地の85%を占める)を有しており、隣接する国公立の試験研究機関との共同研究ネットワークを形成し、幅広い複合生態フィールドの教育研究を展開しています。また、専攻・コース横断的に学内外の研究機関とも共同で学際研究教育を推進する「食と農免疫国際教育研究センター(CFAI)」、「次世代食産業創造センター(ICAF)」、「放射光生命農学センター(A-Sync)」が設置されており、これらのセンターによる幅広い融合研究領域において、農学に関わる分子・遺伝子レベルの生命現象の基礎科学から産業の現場に至る応用科学までの幅広い教育・研究を行うとともに、豊富な融合研究のシーズを発掘し、産学官連携や海外国際連携を組織的に進めています。
仙台市地下鉄の青葉山駅南口を出ると、キャンパスモール正面に農学研究科・農学部の総合研究棟があり、隣接して講義棟・図書館・厚生施設が一体となった青葉山コモンズが並んでいます。青葉山地区では、理学・薬学・工学の理系研究科・学部および研究所と共に、総合大学東北大学の高度な教育研究を牽引しています。緑豊かで自然に囲まれた青葉山新キャンパスに、高い志を持った国内外の若人が集い、本研究科・学部構成員と共に、農学が抱える社会的課題の解決に向けた自由な発想と挑戦的研究が展開できる環境を提供できるよう最大限に努力していきます。