フェロトーシス感受性を制御するセレン運搬タンパク質を同定-がんや神経変性疾患研究への応用につながる成果-
フェロトーシスは、酸化ストレスに関連して生じる脂質過酸化依存性の細胞死であり、アルツハイマー病などの神経変性疾患の病態や、がんの治療抵抗性などに関わることが知られ、治療標的として注目を集めている生命事象です。
東北大学大学院農学研究科の伊藤隼哉助教、仲川清隆教授、大学院医学系研究科の三島英換非常勤講師、大学院薬学研究科の外山喬士講師、斎藤芳郎教授らは、ドイツ・ヘルムホルツセンターミュンヘン 中村俊崇研究員(当時)、Marcus Conrad教授らとの国際共同研究により、抗酸化酵素の一つであるペルオキシレドキシン6(PRDX6)が、生体内の酸化ストレス制御に必要な微量元素であるセレンの細胞内での有効利用を促すという、これまで知られていなかった機能を担っており、それによってフェロトーシスを制御していることを明らかにしました。またPRDX6は、がんの増殖や脳内でのセレンの利用効率にも重要な役割を担っていることが示されました。本成果はPRDX6を標的とした新たな抗がん薬や神経変性疾患の治療薬開発につながることが期待されます。
本研究成果は2024年11月14日に国際学術誌Molecular Cellに掲載されました。
図:PRDX6は、必須微量元素である「セレン」の細胞内運搬の役割を担うことで、セレンの利用効率を高め、GPX4をはじめとしたセレンタンパク質の合成を促進する。その結果、フェロトーシスを抑制する。PRDX6を欠損させると、がん細胞はフェロトーシスを起こしやすくなり、脳ではセレンタンパク質の発現の低下を引き起こす。
【論文情報】
タイトル:PRDX6 dictates ferroptosis sensitivity by directing cellular selenium utilization
著者: Junya Ito, Toshitaka Nakamura, Takashi Toyama, Deng Chen, Carsten Berndt, Gereon Poschmann, André Santos Dias Mourão, Sebastian Doll, Mirai Suzuki, Weijia Zhang, Jiashuo Zheng, Dietrich Trümbach, Naoya Yamada, Koya Ono, Masana Yazaki, Yasutaka Kawai, Mieko Arisawa, Yusuke Ohsaki, Hitoshi Shirakawa, Adam Wahida, Bettina Proneth, Yoshiro Saito, Kiyotaka Nakagawa, *Eikan Mishima, *Marcus Conrad (*責任著者)
掲載誌:Molecular Cell
DOI: 10.1016/j.molcel.2024.10.028
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科 食品機能分析学分野
助教 伊藤隼哉(いとう じゅんや)
TEL: 022-757-4419
Email: junya.ito.d3*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院医学系研究科
腎臓内科学分野
非常勤講師 三島英換(みしま えいかん)
Email: eikan*med.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学農学部 総務係
TEL: 022-757-4003
Email: agr-syom*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)