ヒトスジシマカに対する青色光の殺虫効果が明らかに:重要衛生害虫ヤブカ類の青色光による駆除技術の開発に期待

応用昆虫学分野の堀雅敏教授らは世界的な重要衛生害虫であるヒトスジシマカを青色光の照射により殺虫できることを明らかにしました。

蚊は吸血による炎症を引き起こすだけでなく、死に至る可能性のある様々な病気を媒介するため最も危険な生物の一つです。また、蚊が媒介するウイルス病の多くは適用できるワクチンや治療薬がありません。そのため、媒介者である蚊を防除することが蚊による感染症を減らすためには重要です。ボウフラが発生する水の溜まっている場所に殺虫剤を処理することで成虫の発生を抑えることはできますが、殺虫剤抵抗性の発達や水圏生態系への悪影響が懸念されています。実際、蚊類のいくつかでは殺虫剤抵抗性虫の出現が確認されています。今回の研究対象であるヒトスジシマカは現在、世界中に分布域を拡大し、大きな問題となっています。ヒトスジシマカはデング熱、ジカ熱、チクングニア熱、黄熱、リフトバーレー熱など多くのウイルス病を媒介します。特に、デング熱は世界で毎年3億9000万の人が感染しているとも推定されており、2014年には東京でも国内感染が報告され問題となったことを覚えている方も多いかと思います。

堀教授らのグループは青色光(400〜500 nmの可視光)に殺虫効果があることを発見し、2014年に発表していますが、今回の研究で、ヒトスジシマカに対しては420 nm近辺の青色光が特に効果的な殺虫効果をもつことを明らかにしました。すなわち、420 nmの青色光をヒトスジシマカの幼虫や蛹のいる水面に当てることで彼らを殺虫でき、成虫の発生を阻止できることを示しました。水面に青色光を当てるだけでヒトスジシマカの発生を抑えられるので、今後、殺虫剤に代わるクリーンな蚊の駆除技術として実用化されることが期待されます。

この研究は、堀雅敏教授および博士後期課程に在籍していた谷山克也さん(2022年3月に博士後期課程を修了)が行い、成果は2022年6月16日に国際学術誌「Scientific Reports」で公開されました。

幼虫〜蛹期での青色光照射によるヒトスジシマカに対する殺虫効果

【掲載論文情報】
タイトル:Lethal effect of blue light on Asian tiger mosquito, Aedes albopictus (Diptera: Culicidae)
著者:Katsuya Taniyama, Masatoshi Hori*(*責任著者)
雑誌名:Scientific Reports 12, 10100
掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41598-022-14096-y
DOI:10.1038/s41598-022-14096-y

【問い合わせ先】
堀雅敏
東北大学大学院農学研究科応用昆虫学分野 教授
e-mail: masatoshi.hori.a3*tohoku.ac.jp (*を@に変更してください)

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