食べた酸化脂質の行き着く先は?

脂質は、私たちのからだを構成する重要な成分です。一方、脂質が酸化され過酸化脂質となり、からだに蓄積すると、疾病に繋がると言われています。最近、過酸化脂質は私たちが日常的に食べる食品(油等)にもごく僅かながら含まれることが明らかになり、その行方(摂取したものは吸収され蓄積するのか?吸収されずに代謝されるのか?)に興味が持たれていました。

東北大学大学院農学研究科の仲川清隆教授および髙橋巧博士、福島大学の吉永和明准教授、秋田大学の桐明絢助教、東京海洋大学の後藤直宏教授らの研究グループは、最新の分析技術を構築・駆使し、過酸化脂質の吸収・代謝解明に挑戦しました。その結果、摂取した食事由来の過酸化脂質は吸収されないものの、その腸管への流入刺激が「からだ(腸管)の中での脂質の酸化」を引き起こし、それにより「新たな過酸化脂質が生成されること」を初めて明らかにしました。長らく、過酸化脂質がどのようにしてからだに蓄積するかは不明でしたが、本研究によってそのメカニズムの一端が明らかになりました。今後、こうしたことの生理的意義(からだに備わった適切な防御反応なのか?等)を追究することで、疾病の早期発見・予防・治癒法の開発に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2022年9月19日に国際学会誌「Redox Biology」にオンライン掲載されました。

 

写真1:TGと過酸化TGの吸収・代謝
摂取した過酸化TG自体は代謝(還元/分解)されるが、その刺激が生体内での「新たな過酸化TGの生成」を引き起こす。なお、この図ではグリセロール骨格sn-3位の脂肪酸が酸化されているが、実際はsn-1位や2位も同様に酸化され得る。


写真2:構造解析により、TGがどのような酸化を受けたのかが分かる。
この図では例として、グリセロール骨格sn-2位にOOHが入った過酸化TGの構造を示している。

【論文情報】
Dietary triacylglycerol hydroperoxide is not absorbed, yet it induces the formation of other triacylglycerol hydroperoxides in the gastrointestinal tract
著者:髙橋巧1、加藤俊治1, 2、伊藤隼哉1、清水直紀1、Isabella Supardi Parida1、髙橋麻由子1、境野眞善2、今義潤2、吉永和明3、桐明絢4、後藤直宏5、池田郁男1、仲川清隆1, 2

1:東北大学大学院農学研究科 食品機能分析学分野
2:東北大学大学院農学研究科 J-オイルミルズ油脂イノベーション共同研究講座
3:福島大学農学群食農学類 食用油脂研究所
4:秋田大学大学院理工学研究科 生命科学専攻
5:東京海洋大学食品生産科学科 食品保全化学研究室

雑誌名:Redox Biology
DOI:https://doi.org/10.1016/j.redox.2022.102471

研究成果詳細

 

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科 食品機能分析学分野
教授 仲川清隆
TEL:022-757-4416
E-mail:kiyotaka.nakagawa.c1*tohoku.ac.jp (*を@に変更してください)

東北大学大学院農学研究科 食品機能分析学分野
日本学術振興会特別研究員(PD) 髙橋巧
TEL:022-757-4419
E-mail:takumi.takahashi.p3*alumni.tohoku.ac.jp (*を@に変更してください)

(報道に関すること)
東北大学大学院農学研究科 総務係
TEL022-757-4003
E-mailagr-syom*grp.tohoku.ac.jp (*を@に変更してください)
980-0845 仙台市青葉区荒巻字青葉468-1

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