菌糸は電気的シグナルによって行動を制御している!?
木材腐朽菌は、森林の土壌中に菌糸のネットワークを広げ、倒木や落枝などを分解しながら水分や炭素、養分などの物質を運搬(転流)することで森林の物質循環に重要な役割を果たしていると考えられています。これまで、木材腐朽菌の知的な行動(記憶・学習・決断)が報告されていますが、菌糸が行動をどのように制御しているのかはよくわかっていません。
東北大学大学院農学研究科の深澤遊准教授の研究グループは、ナメコと近縁な木材腐朽菌Pholiota brunnescensの培養菌糸にエサとして木片を与え、木片に菌糸が定着・分解していく過程における電位変化を、菌糸の複数ヶ所で104日にわたって測定しました。その結果、木片が設置された場所の菌糸から菌糸全体へ、電位変化が伝わっていることが確認されました。また、木片の定着が完了したと考えられる培養60日後からは木片の場所でのみ、7日間周期の電位振動が見られました。
この結果は、菌糸が電気的なシグナルで行動を制御していることを示唆しています。
本研究成果は2024年7月6日に科学誌Scientific Reportsで公開されました。
【論文情報】
論文タイトル:Electrical integrity and week-long oscillation in fungal mycelia
著者:Yu Fukasawa*, Daisuke Akai, Takayuki Takehi, Yutaka Osada
*責任著者:東北大学大学院農学研究科 森林生態学分野
准教授 深澤遊
雑誌名:Scientific Reports
DOI: 10.1038/s41598-024-66223-6
URL:https://link.springer.com/article/10.1038/s41598-024-66223-6?utm_source=rct_congratemailt&utm_medium=email&utm_campaign=oa_20240706&utm_content=10.1038/s41598-024-66223-6
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
深澤 遊(フカサワ ユウ)
東北大学大学院農学研究科 准教授
TEL:0229-84-7397
Email:yu.fukasawa.d3@tohoku.ac.jp
(報道に関すること)
東北大学大学院農学研究科
附属複合生態フィールド教育研究センター 総務係
TEL: 0229-84-7312
Email: far-syom@grp.tohoku.ac.jp