ナラ枯れは枯死木の菌類群集を変えることで 木材分解を遅らせていた 〜モニタリング研究による実証結果〜
ブナ科樹木萎凋病(通称「ナラ枯れ」)は、全国的にコナラ属樹種(注2)の大量枯死をもたらしています。枯死木からは分解に伴いCO2が放出されるため、樹木の大量枯死は森林からのCO2放出量を増やすと予想されています。しかし、樹病による枯死が枯死木の分解に与える影響はよくわかっていません。
東北大学大学院農学研究科の深澤遊准教授を代表とする研究グループは、ナラ枯れが発生している宮城、京都、宮崎の3か所で、ナラ枯れで枯死した直後のコナラと、外見状健全なコナラをそれぞれ伐倒して丸太にし、森林に設置して分解過程と菌類群集の変化を比較モニタリングするプロジェクト「Pest and Latitudinal Influences on Decomposition Experiment (PLIDE) 」を実施しています。実験開始後1年半の期間にわたる1200点のデータから、ナラ枯れが枯死木内部の菌類群集を低下させることで、材分解を遅らせている可能性が示唆されました。
本研究成果は2025年1月8日(水)に国際誌Environmental Microbiologyで公開されました。

図1. ナラ枯れを引き起こすカシノナガキクイムシと、キクイムシの穿孔により大量の木屑が根元に溜まったコナラ(左上写真)と本研究の調査地3カ所の場所(地図)。
【用語解説】
注1. ナラ枯れ
カシノナガキクイムシが媒介する病原菌 Raffaelea quercivora によって引き起こされる通水阻害によるコナラ属樹種の枯死現象。
注2. コナラ属樹種
落葉性のコナラや常緑性のウバメガシなど多くの種を含み、古くから椎茸のホダ木や薪、炭などに利用されてきた。
【論文情報】
タイトル:Oak wilt disease may reduce the initial decay rate of dead Quercus serrata stems by altering fungal communities in the wood.
著者:Yu Fukasawa*, Satsuki Kimura, Yuji Kominami, Masahiro Takagi, Kimiyo Matsukura, Kobayashi Makoto, Satoshi N Suzuki, Shuhei Takemoto, Nobuaki Tanaka, Mayuko Jomura, Kohmei Kadowaki, , Masayuki Ushio Haruo Kinuura, Satoshi Yamashita
*責任著者:深澤 遊(東北大学大学院農学研究科 准教授)
雑誌名:Environmental Microbiology
DOI:10.1111/1462-2920.70026
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
深澤 遊(フカサワ ユウ)
東北大学大学院農学研究科 准教授
TEL: 0229-84-7397
Email: yu.fukasawa.d3@tohoku.ac.jp
(報道に関すること)
東北大学大学院農学研究科
附属複合生態フィールド教育研究センター 総務係
TEL: 0229-84-7312
Email: far-syom@grp.tohoku.ac.jp