日本の栽培稲がミトコンドリアに隠し持っている花粉殺しの遺伝子
収量の多い一代雑種品種の育種に有用な形質に、細胞質雄性不稔性(CMS)と呼ばれるものがあります。CMSは核とミトコンドリアの相性が悪い時に、花粉が死滅して実らなくなる現象です。戻し交雑法を用いて日本型稲のミトコンドリアとアフリカ稲の核を併せ持ったイネを作出すると花粉が死滅して不稔となります。
環境適応植物工学分野の鳥山欽哉教授らは、ミトコンドリアのゲノム編集技術の一つであるmitoTALENを用いて、日本型稲のミトコンドリアゲノムに存在するorf288と呼ばれる遺伝子を欠失させておくと、アフリカ稲を戻し交雑しても花粉は死滅せずに結実することを明らかにしました。これよりorf288遺伝子が潜在的な花粉殺し遺伝子であることを証明しました。
私たちが普段食べているお米のミトコンドリアにも花粉殺し遺伝子が存在するとは驚きです。本研究成果を展開すると一代雑種育種法に画期的技術革新が期待されます。
【掲載論文情報】
タイトル:Cryptic cytoplasmic male sterility-causing gene in the mitochondrial genome of common japonica rice
著者:Toriyama K, Iwai Y, Takeda S, Takatsuka A, Igarashi K, Furuta T, Chen S, Kanaoka Y, Kishima Y, Arimura S, Kazama T
雑誌名:The Plant Journal
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tpj.17028
【問い合わせ先】
鳥山欽哉
東北大学大学院農学研究科環境適応植物工学分野 教授
e-mail: torikin*tohoku.ac.jp *を@に変更してください。