東北地方初確認のカツオノエボシの仲間が新種と判明—伊達政宗にちなみ「ミカヅキノエボシ」と命名—
【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科
教授 エイムズ・シェリル(Ames Cheryl)
研究室ウェブサイト
Press release in English
【発表のポイント】
宮城県の仙台湾でカツオノエボシ属の新種を仙台湾で発見し、ミカヅキノエボシ「学名:Physalia mikazuki」と命名しました。
東北地方でのカツオノエボシ属の確認は初です。
黒潮の北上や海水温の上昇など、気候変動に伴う海洋環境の変化が本種の出現に関係している可能性があります。
有毒種の北上は、生態系の変化に加え、海水浴等にも注意喚起が必要です。
【概要】
カツオノエボシ(鰹の烏帽子、英名:Portuguese man-of-war)は、世界中の熱帯から温帯の海域に広く分布する有毒クラゲで、青く透明な浮き袋と長い毒触手を持つことで知られています。これまで日本の北部沿岸ではカツオノエボシの仲間のクラゲが正式に記録されたことはありませんでした。
東北大学大学院農学研究科のエイムズ・シェリル(Ames Cheryl)教授と大越和加教授の研究チームは、共同研究チームが仙台湾の蒲生海岸で採取したカツオノエボシ属(Physalia)と見られる個体の同定を行いました。その結果、形態的および遺伝的解析により、本種が既知のカツオノエボシ属の種類(P. physalis、P. utriculusなど)とは異なる新種であることを明らかにし、伊達政宗の兜を飾る三日月にちなんで「ミカヅキノエボシ(Physalia mikazuki)」と命名しました。本報告は、カツオノエボシ属が東北地方で発見された最初の記録です。さらに粒子追跡シミュレーションにより、黒潮の北上や海水温の上昇が本種の出現に関係している可能性があることがわかりました。ミカヅキノエボシの観測は気候変動が海洋生物の分布に影響を与えていることを示す重要な証拠となると考えられます。
本成果は、沿岸海域の温暖化と海流の変化が東北日本の海洋生物の分布に影響を与えていることを示しており、海洋生態系の変動機構の解明に貢献すると考えられます。
本成果は、海洋生物学の専門誌Frontiers of Marine Scienceに10月30日に掲載されました。
図1.宮城県仙台湾の蒲生海岸、Physalia mikazuki sp. nov. 2024年7月に初めて発見された。黒潮が北上し暖流活動の影響により、多数のミカヅキノエボシが海岸線に沿って打ち上げられた。©東北大学 / 落合芳樹
【論文情報】
タイトル:Physalia mikazuki sp. nov. (Phylum Cnidaria; Class Hydrozoa) Blown into Japan’s Northeast (Tohoku) at the Whim of Marine Ecosystem Change
著者:Chanikarn Yongstar*, Yoshiki Ochiai, Muhammad Izzat Nugraha, Kei Chloe Tan, Ayane Totsu, Waka Sato-Okoshi, Cheryl L Ames*
*責任著者:東北大学大学院農学研究科 – Chanikarn Yongstar, – Cheryl L Ames
掲載誌:Frontiers in Marine Science ; Marine Molecular Biology and Ecology
DOI: 10.3389/fmars.2025.1653958
東北地方初確認のカツオノエボシの仲間が新種と判明—伊達政宗にちなみ「ミカヅキノエボシ」と命名—大学院農学研究科AMESCHERYLLYNN教授の研究成果は、海洋生物学の専門誌Frontiers of Marine Scienceに10月30日に掲載されました。https://t.co/7kY45P7tCB pic.twitter.com/Q1Ryny0fXv
— 東北大学大学院農学研究科 (@tu_agr_pr) December 1, 2025
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