氏名 藤井 豊展
職位 准教授
TEL 0225-53-2436
FAX 0225-53-2436
Mail toyonobu.fujii.a8*tohoku.ac.jp(*を@に換えてください)
専門分野 海洋生態学、群集生態学、環境動態解析
経歴 英・イーストアングリア大学生物科学部卒業(生態学専攻)、英・ヨーク大学環境学部博士課程修了(環境管理専攻)、英・アバディーン大学生物科学部NERCポスドク研究員、同大学部BPフェロー研究員、東北大学大学院農学研究科特任助教、同大学院特任准教授を経て現在に至る。
Research map https://researchmap.jp/fujiitoyonobu
研究内容
  1. 東北マリンサイエンス拠点形成事業(TEAMS)と沿岸域における社会・生態システムの動態解析

    本研究では、女川湾における2011年東日本大震災の影響および海洋生態系の動態メカニズムの解明に取り組みながら、地域の漁業復興や持続可能な社会の確立に貢献することを目指している。大きな攪乱を受けた海洋生態系の変動過程を把握するためには、水温、塩分、水質、底質などの基本的な環境データに加え、気象データ、湾内外の地形や流況、生息生物の構成や分布、人間活動の影響、内陸土地利用の変化など、非常に多くの物理・生物・化学・社会経済的データを考慮する必要がある。そこで、このような膨大な量の情報を、幾重にも重なるデータの層に見立て、共有する時空間座標をリファレンスとするデータフレームを構築し、これら複層的データの相互関連性を分析・要約・可視化してゆくことで、女川湾の「動的なハビタットマップ」を構築している。また、このような多元的なデータを用いて、震災が起こる前から後にかけての海洋環境の時間的・空間的変動を分析し、自然災害や環境、人間活動の変化が女川湾海洋生態系や水産資源量の変動パターンにどのような影響を与えているのかを統合的に解析している。

  2. 海洋環境における人工構造物と生態系動態の関係性(BP Fellowship)

    世界には、大陸棚を中心に7500以上もの石油掘削の為の洋上施設が存在し、北海油田だけでもその数は500以上に上る。もともと環境汚染や漁業操業への悪影響の可能性が懸念されていた海洋油田開発だが、最近ではこのような洋上掘削基地やこれらに付随する海底人工構造物やパイプラインなどは、むしろ冷水サンゴ礁や魚礁として、海洋生物資源や生態系の多様性を保全する機能があることが分かってきた。本プロジェクトでは、代表研究者として、洋上石油掘削基地やその他人工構造物一般(人口漁礁、沈没船、洋上風力発電施設や養殖筏など)の物理的な存在が、生態系の多様性や魚類等の地理的分布、個体数動態または食物網構造等に与える影響を調査研究した。また、その知見を利用した海洋環境モニタリングおよび現代における海洋環境修復や保全への応用の可能性も探ってきた。

  3. 新世紀を拓く深海科学教育プログラム(HADEEP)

    英国・アバディーン大学と東京大学との国際共同プロジェクト「新世紀を拓く深海科学教育プログラム(HADEEP)」の中心研究課題として、主に太平洋の周縁に沿って分布している「海溝システム」の生態系の研究にPDRA研究員として従事した。ここでは、主にランダーと呼ばれる水中観測機材を使用して、海洋環境の中でも最も深い「超深海」と呼ばれる水深層(>6000m)に生息する深海生物の構成や分布を調べた。また環境データ・生物サンプルの回収や分析、深海生物の行動や生物間相互関係の調査といった研究活動にも従事した。それまで未知の部分の多かった超深海の海溝システムにおける環境条件と、そこに分布する生物相との生態学的な関連を考察し、海溝生態系の実態とその構築メカニズムの解明に貢献した。

  4. 英国ヨーク大学・環境学部博士課程在籍時の研究

    北西ヨーロッパの沿岸河口域に発達する干潟には、環形動物や貝類などの底生動物が豊富に生息しており、魚類や鳥類といった様々な捕食生物層の生育・産卵場所として、生態学的に非常に重要な役割を果たしている。本研究では、英国のハンバー河口域に広がる干潟とそこに生息する底生生物相の構成や分布を調査し、潮間帯の地形や堆積物、海洋物理化学的な変数との関連性を重視しながら、地球温暖化に伴い発生する様々な環境変動を定量的に予測し、海面上昇が河口域や沿岸域の生態系に与える影響についての研究に取り組んだ。