氏名 宮下 脩平
職位 助教、プロミネントリサーチフェロー
TEL 022-757-4298
FAX 022-757-4300
Mail shuhei.miyashita.d7*tohoku.ac.jp(*を@に換えてください)
専門分野 植物病理学
経歴 東京大学農学部卒業・同大学院農学研究科博士課程修了。JSPS特別研究員-DC1(東京大学)、JSTさきがけ研究員(東京大学・農業生物資源研究所)、JSPS特別研究員-PD(農業生物資源研究所)を経て現職。
Research map https://researchmap.jp/7000012640
研究内容

キュウリモザイクウイルスとは

キュウリモザイクウイルスは宿主範囲が非常に広く、ウリ科・ナス科・アブラナ科など双子葉植物のほか、単子葉植物であるイネ科作物にも感染し、世界中の農業現場で減収をもたらしている重要植物病原体です。また、キュウリモザイクウイルスはウイルスの中でも進化が特に速いRNAウイルスであり、分節ゲノムをもつことから、ウイルス進化研究の「モデル」の一つでもあります。そこで私はキュウリモザイクウイルスに関する研究を軸として、植物のウイルス抵抗性機構の研究とウイルスの進化と社会性に着目した防除技術開発を行っています。

キュウリモザイクウイルス感染域の蛍光タンパク質による可視化 キュウリモザイクウイルス粒子の模型(約2,000万倍)。

1.植物のウイルス抵抗性機構とその進化

圃場、自然界を問わず植物にはさまざまな病原体が感染し病気を引き起こします。糸状菌(カビ)、細菌、ウイルスなどが主な病原体です。このうちウイルスには直接効く農薬が存在しないため、農作物の生産におけるウイルス病の防除には特有の困難が伴います。そこで植物がもつウイルス抵抗性システムの一つであるR遺伝子によるウイルス検知・抵抗性誘導機構について、分子生物学的な手法と数理モデルを利用したシミュレーションを併用する方法で、実証と理論の両面から明らかにしようとしています。これにより安定的な植物ウイルス防除手段を提案することを目指しています。

この研究は特に、当分野で研究が進められてきたキュウリモザイクウイルスとその外被タンパク質を認識するシロイヌナズナのR遺伝子であるRCY1の関係性を軸として展開しています。

関連論文:Karino et al., Artificial coat protein variants of cucumber mosaic virus induce enhanced resistance upon recognition by an R gene, J Gen Plant Pathol (2023)

Abebe et al., Plant death caused by inefficient induction of antiviral R-gene-mediated resistance may function as a suicidal population resistance mechanism, Commun Biol(2021)

関連和文総説:宮下脩平・DA Abebe、陸上植物の抗ウイルス集団抵抗性~感染個体の死が周囲の血縁個体を守る~、化学と生物(2022)

宮下脩平・高橋英樹、植物のR遺伝子によるウイルス抵抗性、ウイルス(2015)

2.ウイルスの進化と社会性に着目した防除技術開発

ウイルスは変異率が高いため常に多様な変異体が集団内に共存します。この多様なウイルスの集団が宿主体内においてヒトの集団のような社会的挙動を示す可能性をこれまで明らかにしてきました。すなわち、協力・裏切り・ルールの形成といった社会的挙動です。ウイルスが社会的挙動を示す部分は非常に絶妙な調整がなされており、それがゆえに人為的な介入の効果がでやすいと期待されます。そこで植物ウイルスの社会システムとその分子レベルでの動作原理を明らかにするとともに、社会システムの弱点を標的とする革新的な植物ウイルス防除技術の確立を目指しています。

具体的には、キュウリモザイクウイルスについての研究を中心に行っています。キュウリモザイクウイルスは分節ゲノムをもつウイルスであることから、その分節量比が決定する機構やその摂動によるウイルス弱毒化を目指した研究を行っているほか、キュウリモザイクウイルスで見出した「多数決型意思決定」について、その分子機構の解明と阻害によるウイルス防除を目指した研究などを行っています。

関連論文:Miyashita et al., Viruses roll the dice: the stochastic behavior of viral genome molecules accelerates viral adaptation at the cell and tissue levels, PLOS Biol (2015)

シーズ

1.新規R遺伝子の探索

2.野生型ウイルスを増殖阻害する改変ウイルスの開発

3.無病徴感染するウイルスの探索とベクター化

4.植物病原体発生動態のシミュレーション解析