氏名 新谷 尚弘
職位 教授
TEL 022-757-4445
Mail takahiro.shintani.d7*tohoku.ac.jp(*を@に換えてください)
専門分野 真核微生物(酵母、麹菌)のタンパク質代謝、真核微生物を用いた有用物質生産
経歴 東北大学農学部農芸化学科卒、同大学大学院農学研究科博士課程後期修了(農芸化学専攻)、学術振興会特別研究員PD(自然科学研究機構基礎生物学研究所)、米国ミシガン大学分子細胞発生生物学部研究員、東北大学大学院農学研究科准教授を経て現職
Research map https://researchmap.jp/read0116692?lang=ja
研究内容

 

  1. 栄養環境ストレスに対する応答
    微生物の生存に必要な環境中の栄養源は常に変動しており、栄養の飢餓や過多に晒されています。これらの栄養ストレスに対して微生物は自らの構成成分を大規模に再編することにより、適応しています。このダイナミックな細胞の再構築におけるタンパク質分解(オートファジー、エンドサイトーシスなど)の役割について、出芽酵母をモデルとして研究しています。
  2. 麹菌を用いた組換えタンパク質の生産
    麹菌は穀物に含まれるデンプンやタンパク質などを分解する加水分解酵素を大量に分泌生産します。この特性によって、日本では古くから醸造発酵産業に用いられてきました(今では、日本の「国菌」として認定されています)。麹菌の高い酵素生産性を活かした組換えタンパク質生産の開発研究を行なっています。

 

シーズ
  • 酵母の呼吸から発酵への転換期における細胞膜輸送体の分解機構を解明

酵母Saccharomyces cerevisiaeは真核生物のモデル生物として基礎研究に用いられると共に、世界中で古くからアルコール発酵に用いられてきました。S. cerevisiaeは酸素存在下でもグルコースなどの発酵性炭素源(自然界では、果実、樹液や花の蜜)があれば呼吸ではなくアルコール発酵を行う一風変わった生き物でもあります。他の炭素源があっても、発酵性炭素源が優先的に消費されます。環境中の発酵性炭素源を使い果たすと、それまで主流だった解糖系—発酵によるエネルギー生産から、呼吸を中心としたエネルギー生産に転換し、遺伝子発現が大きく変化します。本研究の対象であるJen1は原形質膜に局在する乳酸・ピルビン酸輸送体であり、その発現は発酵から呼吸への転換(つまり、グルコースの枯渇)によって著しく活性化します。しかし、再び発酵性炭素源が流入してくると、原形質膜上にあるJen1は速やかに分解されます。当研究室では、グルコースに応答してJen1が選択的に分解される仕組みを明らかにしました。呼吸期の酵母細胞がグルコースに晒されるとJen1のC末端の領域が、Rod1−Rsp5ユビキチンリガーゼ複合体により認識・ユビキチン付加され、エンドサイトーシスを介した液胞での分解へと導かれます。このC末端領域(20アミノ酸残基)を他の異なる制御下にある輸送体(メチオニン輸送体)に融合すると、グルコースおよびRod1依存的に分解されました。すなわち、この領域はRod1依存的なグルコース応答性のデグロン(分解制御領域)であると言えます。この成果はS. cerevisiaeにおける栄養源変化に応答した栄養取込み制御機構の解明だけでなく、哺乳類における糖の取込み制御の解明にも貢献することが期待されます。

リンクURL: https://doi.org/10.1074/jbc.RA117.001062