氏名 米山 裕
職位 教授
TEL 022-757-4364
FAX 022-757-4365
Mail hiroshi.yoneyama.a4*tohoku.ac.jp (*を@に換えてください)
専門分野 応用微生物学、動物微生物学
経歴 東北大学大学院農学研究科博士前期課程修了後、協和発酵工業株式会社入社、医薬研究所にて抗生物質の開発研究に携わる。その後、東海大学医学部細胞情報科学教室に着任し、緑膿菌の外膜透過性・薬剤耐性に関する研究を行い、2000年東北大学大学院農学研究科に着任、現在に至る。
Research map https://researchmap.jp/?lang=ja
研究内容

1.細菌の環境ストレス(栄養飢餓ストレス)に対する生存戦略に関する研究
 大腸菌のL-アラニン(L-Ala)要求性変異株は、L-Ala飢餓ストレスに遭遇すると自然突然変異より高頻度でL-Ala非要求性サプレッサー変異株が出現することを発見しました。このサプレッサークローンのゲノム解析を行った結果、本来のL-Ala合成遺伝子とは異なるピルビン酸下流に位置するピルビン酸脱水素酵素と酢酸生成経路の遺伝子に突然変異が導入されていることが明らかとなりました。これらのことから、サプレッサー変異株はL-Ala飢餓ストレスを感知後、突然変異頻度の上昇が起こり、細胞内ピルビン酸レベルの上昇をきたす突然変異導入の結果、本来L-Alaを合成しないpromiscuous enzymeが関与するmulticopy suppressionに関連した現象によって出現したことが明らかとなりました(Mishimaら, 2021)

2.病原因子を標的とした新規抗生物質アジュバントの探索
 ペニシリンをはじめとするこれまでの抗菌薬は細菌を死滅あるいは増殖阻止を指標として探索された薬剤です。同様の戦略で新規抗菌薬が開発されたとしても耐性菌の出現を避けることはできません。一方、病原細菌の病原因子は細菌が宿主に感染するためには必要ですが細菌の増殖そのものには必須機能ではありません。そのため病原因子をターゲットとする薬剤(病原因子阻害剤)に対する耐性菌の出現は、通常の抗菌薬に比べ低いことが期待されています。そこで日和見感染症起因菌である緑膿菌の重要な病原因子である鉄取り込み系に関連する代謝系に注目し、さらにこのシステムに加え病原細菌の病原因子分泌系として機能することが近年見いだされた新規タンパク質分泌系(Twin-Arginine Translocation (TAT)系)を同時に標的とすることができる新規スクリーニング系を構築することに成功しました(Satoら、2015)。現在、この独自のスクリーニング系を用い薬学部との共同研究で薬学部が保有する約6,000種類の化合物ライブラリーを対象としたスクリーニングを実施しており、いくつかの候補化合物を見いだすことに成功しました。現在それらの特性解析を進めています。

3.抗菌ペプチドを利用した細菌感染症に対する新規防除法の開発に関する研究
 自然免疫の一翼を担う抗菌ペプチドに対する耐性菌の出現頻度は、ペニシリンをはじめとする既存の抗菌薬に比べ、その標的が細胞膜であることから低いという特徴をもっています。そこで、抗菌活性と免疫グロブリンを産生するB細胞に対する遊走活性を併せもつユニークなウシのケモカインCCL28に注目し、その高発現系に加え、CCL28の抗菌活性ドメインと想定されるC末端領域の大腸菌を宿主とした高発現系を構築することに成功しました。また、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に抗菌活性を示すユニークな昆虫由来抗菌ペプチドの大腸菌での高発現系を構築し、その部分精製標品が抗菌活性を示すことを明らかとしました。

4.ウシ乳房炎の新規治療戦略構築に向けた黄色ブドウ球菌特異的ペプチドの取得とその性状評価
 新たなウシ乳房炎防除戦略の一環として新規ミサイル療法のツール開発を目指し、ファージディスプレー法を用いて12アミノ酸からなる黄色ブドウ球菌に特異的結合能をもつペプチド候補の同定に成功しました。

シーズ

 ペニシリンの発見以来、各種抗菌剤が発見され重篤な細菌感染症は制御しうる病となりました。しかし近年、多剤耐性能を有する病原細菌が出現し公衆衛生上の社会問題となっています。これら細菌感染症の脅威に対抗するためには、新規抗菌剤の継続的な研究開発が必須であり社会的にも強く求められています。既存の抗菌剤の多くは細菌の生存に必須の代謝過程をターゲットとしているため、同様の戦略で新規抗菌剤が開発されても耐性菌の出現を回避することはできません。一方、病原細菌が宿主に感染する際に必要な病原因子は細菌の生存に必ずしも必要ではないため、その阻害剤に対する耐性菌の出現頻度は低いと考えられ新規抗菌剤のターゲットとして関心が集まっています。我々はこのような病原因子のなかで新規なタンパク質分泌系であるTat(Twin-arginine translocation)系と鉄代謝系に注目し、それらを標的とする新しいスクリーニング系を開発することに成功しました(参考文献1〜3)。

 

(1) Tat Pathway-Mediated Translocation of the Sec Pathway Substrate Protein MexA, an Inner Membrane Component of the MexAB-OprM Xenobiotic Extrusion Pump in Pseudomonas aeruginosa. Antimicrob. Agents Chemother. 54, 2010, 1492-1497.

(2) Tat Pathway-Mediated Translocation of the Sec-pathway Substrate , OprM, an Outer Membrane Subunit of the Resistance-Nodulation-Division Xenobiotic Extrusion Pumps, in Pseudomonas aeruginosa. Chemotherapy, 59, 2013, 129-137.

(3) Development of a Novel Antimicrobial Screening System Targeting the Pyoverdine-Mediated Iron Acquisition System and Xenobiotic Efflux Pumps. Molecules 20, 2015, 7790-7806.

リンクURL: http://www.rpip.tohoku.ac.jp/seeds/profile/340/no_count:1/lang:jp/request:b1cce6dec574487d24ff3901873eec92/