VOICE: Plant Science [No. 016] 堀雅敏先生(応用昆虫学分野 教授)

植物生命科学コースの学生・卒業生/修了生・教員の声をお届けするインタビュー記事です。月一回くらいの頻度で更新予定です。→記事一覧はこちら

今回は、応用昆虫学分野 教授の堀雅敏先生にお話を伺います。よろしくお願いします。

堀雅敏先生(応用昆虫学分野 教授)

現在どんなご研究をなさっているか教えてください。

 害虫防除における殺虫剤使用の削減を目指して、新たな害虫防除技術の確立につながる基礎的・応用的研究をしています。具体的には、昆虫の化学生態学と昆虫に対する光の作用という、大きく二つのテーマに取り組んでいます。
 昆虫化学生態学の研究では主に、植食性昆虫と植物の相互作用に関わる化学情報について研究しています。植食性昆虫といっても、餌にできる植物種は昆虫種ごとに一定の範囲に限られています。どうしてその植物を餌にできるのか、逆にどうして餌にできないのか、化学的な面から解明することで、害虫を殺さずに行動制御する技術の開発を目指しています。
 昆虫に対する光の作用に関する研究では主に、光の昆虫に対する毒性について研究しています。可視光である青色光に殺虫効果があることを10年程前に見出し、現在、その作用を利用したクリーンな殺虫技術の開発を行うとともに、青色光の殺虫メカニズムの解明を目指して研究を行っています。

写真/青色光による殺虫試験の様子:青色光(400〜500 nm)を昆虫に当てることで、昆虫が死ぬことを複数の種で明らかにしています。

研究をしていて、楽しいと感じる瞬間について教えてください。

 やはり、新しい発見をしたときです。これまで誰も知らなかったまったく新しいことや、これまでの常識とは異なる発見をしたときは、すごく嬉しいです。これまでに一番、嬉しかった発見は、可視光である青色光に殺虫効果があることがわかったときです。それまでは、可視光には昆虫を含む比較的複雑な動物に対する致死効果はないとされていました。この発見により従来の常識を覆すことができ、研究者をやっていて本当に良かったと思いました。

写真/アシグロハモグリバエ:青色光の殺虫効果を研究するきっかけとなったのが、このハエの羽化リズムの研究からでした。

この研究領域/分野を選んだ理由を教えてください。

 子供の頃から昆虫が好きで、2つ上の兄と、よく虫取りをして遊んでいました。親戚に昆虫の研究者がいて、その人に昆虫採集に連れて行ってもらうことも度々ありました。ただ、高校生のときは昆虫を研究しようとは思っていませんでした。大学に入って3年生になり学生実験が始まると、昆虫学実験があり、やはり昆虫を扱った実験は楽しいし、自分に合っているなと感じて、昆虫学研究室(現応用昆虫学分野)に入りました。

写真/ギフチョウ:岐阜に行ったときに、たくさんのギフチョウが飛んでいました。

将来の夢を教えてください。

 環境に優しく、安全性の高い害虫防除技術を開発し、それを世界の害虫防除のスタンダードな技術として普及できればと思います。殺虫剤は害虫防除において必要不可欠なものであると思います。ただ、現在は、あまりにも殺虫剤に頼りすぎているため、環境への負荷の懸念や殺虫剤抵抗生の発達などの問題も出てきています。殺虫剤の使用削減につながるような害虫防除の確立に貢献できればと思います。

写真/アグリビジネス創出フェアでの講演:青色半導体レーザーを用いた新規害虫防除技術の開発についてフェアで講演している様子です。

新しい発見の瞬間の喜びと、それに続く実用化、将来への展望についてお聞かせくださり、勉強になると同時にワクワクしました。ご研究のさらなる発展を楽しみにしております。今日はありがとうございました。

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