訃報 前田浩博士(東北大学特別招聘プロフェッサー)

東北大学特別招聘プロフェッサーである、前田浩博士が5月18日にご逝去されました。享年82歳でした。

前田博士は、1962年に東北大学農学部食糧化学科を卒業、1964年にカルフォルニア大学(Davis校)大学院修士課程を修了し、1968年に東北大学大学院農学研究科で博士課程を修了された後、東北大学医学部細菌学講座助手を経て、ハーバード大学癌研究所(現:ダナファーバー癌研究所)の研究員になられました。その後、1973年に東北大学で医学博士の学位を取得されました。

前田博士は、抗体医薬や高分子結合薬を中心とする高分子薬剤の固型癌局所への薬物送達システムの基盤となるEPR効果(enhanced permeability and retention effect)を発見し、高分子薬剤による癌治療の有用性をいち早く提唱した研究者で、国内外の各賞のほか、2016年にトムソン・ロイター引用栄誉賞(現 クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞)を受賞されております。

前田博士は、東北大学、特に農学研究科の多くの研究者と親交があり、2018年から2020年には、農学研究科の特別講演においてご講演をいただくなど、学生教育、若手研究者の研究指導、関連分野の研究者との交流など貴重な活動を行っていただきました。
2020年4月には東北大学特別招聘プロフェッサーの称号を授与されております。

前田先生の長年にわたるがんの予防と治療に関する研究は、薬剤を目的の組織に取り込ませるDrug Delivery System,(DDS)の先駆的な研究成果として多くの研究者に影響を与え、分野の発展に大きく貢献されました。

謹んで前田浩先生のご冥福をお祈りいたします。


前田浩先生のご逝去を悼しみ、生前より交流が深かった白川 仁より追悼文を掲載いたします。

追悼:前田浩先生

農学研究科 教授 白川 仁

東北大学特別招聘プロフェッサーである前田浩先生の突然の訃報に、呆然とするばかりです。
前田先生は、本学食糧化学科の第1期生であり、食品を化学する研究とその実践に取り組まれてきました。2018年より、毎年、特別講義を行なって戴いており、その成果を拝聴いたしました。昨年度も、少人数の学部生と対面授業を行い、参加した学生を鼓舞するように、質疑応答を熱く行なっておられたことが思い出されます。また、講義のあとの教員との懇談会においても、ご自身の研究のお話だけでなく、施策など幅広い話題を提供され、深く感銘しておりました。このように、前田浩先生は本学の研究と教育活動に大きく貢献してくださいました。

前田浩先生より、ご生前いただいた多大なるご厚意に深く感謝いたしますとともに、ご遺族の皆様へ心よりお悔やみ申し上げます。前田浩先生のご冥福をお祈り申し上げます。