貝毒原因プランクトンの天敵を発見! ~寄生生物を用いた有毒プランクトン防除に期待~

貝毒とは、主に渦鞭毛藻などの有毒プランクトンを捕食した貝が毒を蓄積し、その毒化した貝を食べることで起こる食中毒である。貝毒が発生した貝類の出荷停止などにより、水産業に多大な被害をもたらす。

東北大学大学院農学研究科の西谷 豪 准教授らの研究グループは、全国で麻痺性貝毒を引き起こす原因となっている有毒プランクトン(Alexandrium属)に高い寄生性を有する新規の寄生性渦鞭毛藻(Amoebophrya sp.)を大阪湾から日本で初めて発見し、その単離・培養に成功した。なお、この寄生生物は、珪藻などの無害なプランクトンには寄生しない。

この寄生生物が有毒プランクトンに与える影響について、2020年の大阪湾における現場調査や室内培養実験を行ったところ、有毒プランクトンの70%以上に寄生が生じていることが明らかとなり、その存在が有毒プランクトン密度の減少(寄生された有毒プランクトンは、3日以内にすべて消滅する)に、大きく影響していることが示された。

この寄生生物に関する研究は、これまで日本では全く行われておらず、いつから・どこに・どのくらい存在しているのか、宿主(この場合は有毒プランクトン)がいない時期にどこで・どのような形で生き延びているのか明らかではなく、多くの謎が残されている。今後、寄生が起こりやすい環境条件を解明することで、その年の貝毒発生の規模や収束時期の予測に繋がる可能性がある。将来的には、この寄生生物を「生物農薬」として利用することによって、全国で発生する有毒プランクトン防除法の開発への応用が期待される。

本研究の成果は、2021年10月25日に国際誌「Harmful Algae」で公開されました。論文には、寄生の様子を録画した動画も付随しています。

>>プレスリリース(東北大学ホームページ)