世界2例目となる被嚢穿孔性のゴカイ類を発見 ~ホヤ類が作る水流を利用して餌を採るゴカイ類としては世界初の報告~

石巻専修大学の阿部博和准教授と、伊豆大島ダイビングサービス・チャップの星野修氏、山田一之氏、リージョナルフィッシュ株式会社の荻野哲也グループリーダー、島根大学の川井田俊助教、東北大学の大越和加教授らの共同研究のグループは、被嚢穿孔性のゴカイ類(スピオ科Polydora属)を発見し、国際学術誌「Zootaxa」に新種として発表しました。ホヤ類の被嚢の内部に生息するという特殊な生態から、新種の学名は「Polydora tunicola(ホヤに住むもの)」、和名は「ホヤノポリドラ」と命名しました。ホヤノポリドラはこれまで、伊豆大島の秋の浜と和歌山県の堺漁港のみから発見されています。ホヤノポリドラは、ホヤ類の入水孔(海水の取り込み口)と出水孔(海水のはき出し口)の近くに泥の管を形成して生息し、ろ過摂食を行うホヤ類が作る水流を利用しながら、頭部の2本の触手で餌を採るという形でホヤ類と共生していることが示されました。また、実験の結果、海洋生物では検出されることの少ないセルラーゼ(セルロースを分解する酵素)の活性がホヤノポリドラから検出されました。この結果から、硬い組織を持たないホヤノポリドラがどのようにしてホヤ類の体表を覆う厚くて堅い被嚢の内部に侵入しているのかという疑問に対して、セルラーゼを用いて被嚢に多く含まれるセルロースを分解しているという仮説が提示されました。ホヤ類の被嚢に穿孔して生息するゴカイの仲間は、これまでシリス科の1種で知られ、今回の研究は、世界2例目の被嚢穿孔性のゴカイ類の発見となります。また、ろ過摂食を行うホヤ類が作る水流を利用して餌を採るという共生生態はゴカイ類ではこれまで知られておらず、世界初の報告となります。この成果は6月28日付で国際学術誌「Zootaxa」にて発表されました。

プレスリリース(東北大学Webサイト)

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