牛の胃に共生する微生物と海藻の利用で ブルーカーボン生態系の創出へ 福島国際研究教育機構の委託事業に採択

【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 准教授 多田 千佳
産学連携機構ウェブサイト

【発表のポイント】
・福島国際研究教育機構による「ネガティブエミッションのコア技術の研究開発・実証」委託事業に採択されました。
・本事業では牛の第一胃に共生する微生物を利用し、海藻を原料としたメタン発酵の高効率化、その副生物を海藻育苗に利用するための技術開発を行い、これらの技術を用いたエネルギー生産・資源循環利用によるCO2削減効果を調査します。
・ブルーカーボン生態系の創出、海業(注3)との連携による新ビジネス創出等での活用を目指します。

【概要】
福島国際研究教育機構(略称:F-REI(エフレイ))が公募した令和5年度「ネガティブエミッションのコア技術の研究開発・実証」委託事業に、東北大学を代表機関とするコンソーシアム「浜通りブルーカーボンによるネガティブエミッションシステムの構築のためのコンソーシアム」(代表機関:東北大学、共同研究機関:鹿島建設株式会社、再委託機関:日本エヌ・ユー・エス株式会社)が採択され、2024年 3月29日付で委託契約を締結しました。

本プロジェクトは東北大学大学院農学研究科の多田千佳准教授らによって実施されます。本事業では、沿岸海域におけるCO2吸収・固定を可能にすることを目指します。海藻によるブルーカーボン(注1)に関するコア技術として、東北大学は、海藻を原料としたメタン発酵(注2)を牛の第一胃に共生する微生物を活用して高効率化する技術の開発、鹿島建設は、そのプロセスから副生される栄養塩などを海藻育苗等に活用する技術の開発に取り組みます。

今後、ブルーカーボン生態系の創出、海業(注3)との連携による新ビジネス創出等での活用を目指します。本事業は令和11年度まで行われる予定です。

図1.  海藻からのエネルギー生産とその副産物を利用した海藻育苗、ブルーカーボンを含む全体システムからのエネルギー収支やCO2削減の可能性調査

【用語解説】
注1. ブルーカーボン:2009年10月に国連環境計画(UNEP)の報告書において、藻場・浅場等の海洋生態系に取り込まれた(captured)炭素が「ブルーカーボン」と命名され、吸収源対策の新しい選択肢として提示。ブルーカーボンを隔離・貯留する海洋生態系として、海草藻場、海藻藻場、湿地・干潟、マングローブ林が挙げられ、これらは「ブルーカーボン生態系」と呼ばれる。(国土交通省資料より引用)
注2. メタン発酵:様々な有機物を嫌気性微生物群によって嫌気的に分解、発酵させてエネルギーガスであるメタンを得る技術。発酵できる原料の幅が広く、副産物を肥料などに再利用できる利点があり、地域それぞれで発生する有機資源を循環利用できる。
注3. 海業:海や漁村の地域資源の価値や魅力を活用する事業であって、国内外からの多様なニーズに応えることにより、地域のにぎわいや所得と雇用を生み出すことが期待されるものをいう。(水産庁資料より引用)

詳細(プレスリリース本文)

  • 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 13.気候変動に具体的な対策を
  • 14.海の豊かさを守ろう