菌糸ネットワークでつながっているほうが資源を効率よく利用できる
【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 准教授 深澤 遊
研究者ウェブサイト
【発表のポイント】
・菌類は菌糸と呼ばれる糸状の体を伸ばしてネットワークを形成し、切断されても死にませんが、ネットワークの接続を維持するか積極的に分割してクローンを増やすかは生存戦略上の問題です。
・枯木を分解する木材腐朽菌の菌糸に複数の角材を与え、それらを菌糸で接続させた場合と接続させなかった場合で木材分解速度を比較したところ、接続させた場合の方が分解が速いことがわかりました。
・菌糸でつながっていた方が、水分など、不足しがちな物資を融通し合うことで全体的な資源利用効率が高まったと考えられます。
・森林の物質循環の理解や、病原菌管理技術への応用が期待できます。
【概要】
木材腐朽菌は、森林の土壌中に菌糸のネットワークを広げ、倒木や落枝などを分解しながら水分や炭素、養分などの物質を転流することで森林の物質循環において重要な役割を果たしていると考えられています。これまで、木材腐朽菌がネットワークを維持することの意義を資源利用効率から検証した例はありませんでした。
東北大学大学院農学研究科の深澤遊准教授の研究グループは、木材腐朽菌チャカワタケの培養菌糸に複数の角材を与え、それらを菌糸で接続させた場合と接続させなかった場合で分解速度を比較したところ、接続させた場合の方が分解が速いことがわかりました。菌糸ネットワークが接続していると、水分など生存に必要な物資を、豊富なところから足りないところへ輸送して補うことで、木材の腐朽分解が安定して行われたと考えられます。
菌類が駆動する森林の物質循環の理解や、病原菌管理技術への応用が期待される成果です。
本研究成果は2024年6月19日に国際誌Fungal Ecologyで公開されました。
詳細(プレスリリース本文)
菌糸ネットワークでつながっているほうが資源を効率よく利用できる
— 東北大学大学院農学研究科 (@tu_agr_pr) June 24, 2024
大学院農学研究科深澤遊准教授らの研究成果は2024年6月19日に国際誌Fungal Ecologyで公開されました。https://t.co/EUVi5H5aaV pic.twitter.com/cus8iQ6ZWV
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