半倍数体ハダニ近縁2種の山岳地域での二次的接触帯の存在と交雑状況を解明
【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 教授 陶山佳久
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
・筑波大学生命環境系 佐藤 幸恵助教、大阪公立大学附属植物園 廣田 峻特任助教、東北大学大学院農学研究科 陶山 佳久教授らの共同研究グループは、標高による棲み分けが見られ、半倍数体生物であるハダニ近縁2種を対象に、二次的接触帯の存在や、そこでの交雑、遺伝子浸透状況を調べました。その結果、静岡県から九州にかけた山岳地帯で広範な二次的接触帯の存在が示唆され、遺伝子浸透は極めて低いながらも、2種間の交雑が検出されました。
【概要】
地球上の生物多様性は、種分化の繰り返しにより生み出されており、種分化機構の解明は重要な研究課題の一つです。特に、生殖的隔離が不完全な近縁種間で、それぞれがある程度分化した後に分布が拡大して、二次的に接触帯が形成されている場合、そこでの交雑や遺伝子浸透状況は重要な情報です。しかし、これまで種分化研究は二倍体生物を中心に進められており、遺伝システムが異なる半倍数体生物については、あまり調べられてきませんでした。
本研究では、半倍数体であり、標高による棲み分けが見られるススキスゴモリハダニ種群2種を対象に、静岡県天城山にて形成される二次的接触帯の存在、およびそこでの交雑や遺伝子浸透状況を、雄の形態やMIG-seq法による一塩基多型を用いたゲノム解析、野外の性比状況、室内での交配実験によって調べました。その結果、山の中腹でこれら2種の分布が広範囲に重なっており、先行研究とも併せると、静岡県から九州にかけた山岳地域で、2種の二次的接触帯が広く存在することが示唆されました。室内での交配実験ではわずかながら雑種が形成されたものの、野外では明らかな雑種は見つかりませんでした。しかし、性比状況からは二次的接触帯での種間交尾が推察され、遺伝子浸透は極めて低いながらも、実際に検出されました。また、交雑の影響は不明ですが、奇形の雄が見つかりました。
ハダニ類において、近縁種の二次的接触帯における交雑と遺伝子浸透状況が明らかになったのは本研究が初めてです。半倍数体ハダニにおける種分化について、さらなる解明が期待されます。
図 ススキスゴモリハダニ種群(Stigmaeopsis miscanthi species group)の日本近隣における地理的分布関係と本研究で明らかになった2種の棲み分け状況
半倍数体ハダニ近縁2種の山岳地域での二次的接触帯の存在と交雑状況を解明
— 東北大学大学院農学研究科 (@tu_agr_pr) August 2, 2024
大学院農学研究科陶山佳久教授の共同研究成果は2024年8月2日に「Heredity」に掲載されました。https://t.co/M91hxahRus pic.twitter.com/b8HCk4bKFt
- 15.陸の豊かさも守ろう