南極の極限環境で光と空気の両方で生きられる謎の光合成バクテリアの培養に世界で初めて成功 ~バクテリア界に新しいグループ(門)の創設へ~

微生物資源学寄附講座准教授(現、株式会社県南衛生工業ハザカプラント研究所)の矢部修平は、ワシントン大学化学科のBradley Tebo教授、カリフォルニア大学スクリップス海洋研究所のHubert Staudige名誉教授、元東京大学バイオリソーシス研究分野の横田明准教授、東北大学大学院農学研究科の阿部敬悦教授、同研究科博士課程の武藤清明氏と共同で、南極のエレベス火山山頂付近にある氷の噴気性洞窟から新しい門(バクテリア界の最上位分類階級)に分類され、これまで未培養であった光合成バクテリアの培養に世界で初めて成功し、バクテリア界に44門目となる新しい門「Eremiobacterota(エレミオバクテロタ)」を提唱しました。

この新しい光合成生物は光だけでなく空気中の微量水素をエネルギー源として二酸化炭素を取り込む遺伝的ポテンシャルを持ち、驚くことに、従来とは異なる光合成装置(光化学系IIの新しいファミリー)を持つことが明らかとなりました。なお、新しい光合成装置を持つバクテリア門の発見は約半世紀ぶりです。この新規光合成生物が光合成の起源や進化・多様性の理解を深める重要な生物資源となることが高く見込まれます。

さらに、この生物が属する新門Eremiobacterotaは、地球上の火星類似環境とされる火山の荒廃土壌や南極の砂漠などの極限的に貧栄養な陸地環境に広く生息するグループですので、生命活動の限界を拡張する未知の生存戦略を持つ可能性が高く、宇宙生物研究の発展に資する画期的な生物資源とも成り得ます。

 なお、この成果は2022年12月16日(英国時間)ISME Communications誌に掲載されました。

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  • 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 12.つくる責任 つかう責任