逆転の発想で抗酸化力の測定に成功! ~世界中で使われる総抗酸化力測定法を最適化~

【本学研究者情報】
〇水産資源化学分野中野俊樹准教授
〇水産資源化学分野落合芳博教授
〇栄養学分野白川仁教授

【発表のポイント】
・抗酸化力(抗酸化活性)の測定法は様々あるが、「酸素ラジカル吸収能測定法(略称:ORAC法)」は世界中で使われる著名な測定法の一つ。
・生体や食品が有する抗酸化成分には脂溶性と水溶性の2種類があり、ORAC法はそれらを同時に測り総抗酸化力を算出することができる優れた手法。
・従来のORAC法の測定手順では、水溶性の抗酸化力が著しく過小評価されている事を発見。
・測定方法を改良することで適正な総抗酸化力を把握し、ORAC法の最適化に成功。
・本改良ORAC法により農畜水産物等の食品や生体が有する真の抗酸化力を評価し、抗酸化力が関係するアンチエイジング・サプリメントの開発等に貢献することが期待。

【概要】
 我々の生活はストレスで溢れています。これは人間に限った話ではなく、人の手で飼育される動物や栽培される植物でも同様で、その予防と制御が動植物の健康と生産性に大きく影響します。生体にストレスを及ぼす発生源(ストレッサー)は様々ですが、体内で誘導されるストレスの多くは酸化ストレスであることが分かってきました。その酸化ストレスを防止するためには、生体が有する抗酸化力を把握し、それを維持してさらに増大することが重要です。従って、その実現には正確な抗酸化力測定法が必要です。しかし、世の中には様々な抗酸化力測定法が存在し、いずれも一長一短があってどの測定法がベストなのか未だに定かではありません。

 東北大学大学院農学研究科の中野俊樹准教授、林 聡司氏、落合芳博教授、  白川 仁教授、中国・魯東大学のHui Yu准教授、東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科の遠藤英明教授、Haiyun Wu助教らの研究グループは、数ある抗酸化力測定法の中で最も有名かつ世界中で利用される手法の一つ「酸素ラジカル吸収能測定法(略称:ORAC法)」の改良に取り組み、以下のことを明らかにしました。

 ORAC法は、脂溶性と水溶性の二つのタイプの抗酸化力を同一試料で測定し、総抗酸化力を評価できます。しかし、従来法の手順では、水溶性の抗酸化力が著しく小さく評価されている事を明らかにしました。そこで、従来行われてきた測定手順、すなわち脂溶性と水溶性の抗酸化力の測定順序を入れ替えることで、計測対象が有する真の総抗酸化力を正確に評価できるORAC法の改良と最適化に成功しました。この改良ORAC法により、生体や食品が本来有する真の総抗酸化力を評価することができます。従って、この改良ORAC法は、今後、抗ストレスやアンチエイジング等の機能を有する付加価値の高い食品やサプリメントの開発等への利用と貢献が期待されます。

※本研究成果は、米国 Society for Redox Biology and Medicine および欧州Society for Free Radical Researchが共同で発行する機関誌Advances in Redox Researchに掲載されました。

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